麻雀プロリーグ戦「M.LEAGUE(Mリーグ)2021-22」のファイナルシリーズが4月26日に行われ、KADOKAWAサクラナイツが優勝した。2019年のチーム設立から3シーズン連続でファイナル進出という確かな実力を持ちながら、惜しくも優勝を逃してきたサクラナイツ。三度目の正直で手にしたチャンピオンの座の陰には、チーム最年長のムードメーカー・沢崎誠の体調による離脱をはじめとした様々なドラマがあった。今シーズンの激闘について、療養中の沢崎以外のメンバーと監督に話を聞くと、Mリーグというチーム戦ならではの戦いが見えてきた。前編では優勝に至る道のりと、各メンバーの素顔について掘り下げる。
チーム最年長・沢崎誠の離脱がもたらした団結
KADOKAWAサクラナイツのメンバーは、内川幸太郎、岡田紗佳、沢崎誠、堀慎吾の4名。監督は森井巧が務める。Mリーグ最年長となる67歳の沢崎と最年少28歳の岡田を擁するバラエティ豊かなチームだ。チーム設立時は内川、岡田、沢崎の3名で立ち上がり、2020年に堀が追加加入した。
「昨年は準優勝だったので、そのリベンジを誓っていました。準優勝したことで、気持ち的には優勝争いできるチームだという自信がありました」(内川)
「1年目はかなり緊張していて、ナイーブになることも多かったですが、2年目に堀さんが加入し、3年目の今シーズンは、どんなに苦しい状況になったとしても、しっかり前だけを向いて戦えるようになったなと思います。チームワークも良くて、試合前でも重苦しい雰囲気にならず、ずっと笑っている楽屋でした」(岡田)
Mリーグは8チームで戦うレギュラーシーズン、上位6チームが進出するセミファイナルシリーズ、そこからさらに4チームが進出するファイナルシリーズからなる。今期、レギュラーシーズンでは堀と沢崎が好調でチームを引っ張っていたが、沢崎はファイナルシリーズを前に持病の治療のため離脱せざるを得なくなった。
「沢崎さんが入院されるかもということを聞いて、最初はもう試合どころじゃない気持ちで。チームに入る前から、先輩としてずっとお世話になっていた方。とにかくしっかり身体を治してほしいと思うのと同時に、人間誰しも、僕だって明日どうなるかは分からない。だから4人のチームを意識して今シーズン頑張ろうという気持ちが強まりました」と内川は振り返る。
離脱の話を聞いた時点ではさほど動揺しなかったという堀も、セミファイナルで実感を強めた。「レギュラーシーズンでは絶好調で、ずっとポイントを稼いでくれていた沢崎さんが、セミファイナルで調子を落としたんです。もしそれが理由でチームが負けてしまったら、ここまで引っ張ってきてくれた沢崎さんに責任を感じさせてしまう。それは申し訳ない」
岡田も「沢崎さんはシャイなので口には出さないですが、チームのことをすごく心配していたと思います。『沢崎さんが出てたら優勝できていたのに』と思われないように、しっかりみんなで戦って勝っていきたいと思いました」と語る。結果、沢崎のやむを得ない離脱が、サクラナイツの団結をさらに強めたともいえるだろう。
67歳のベテラン、Mリーグ最高齢でなお現役をひた走る沢崎のすごさを、内川はこう語る。「沢崎さんの麻雀は説明不能。対人競技の面白さを体現していると思います。また経験もすごいので、自分たちならオドオドしてしまうような場面でも常に落ち着いている。チームの精神的支柱でした」森井監督も「経験による引き出しの多さと、常人では理解できないオリジナリティ」と沢崎の麻雀の魅力を評した。
またムードメーカーとしての功績も大きかった。堀は「僕と沢崎さんは少し似ていて、2人とも麻雀イコール人生、何よりも麻雀が優先というタイプなんですが、僕は負けるとめちゃくちゃ悔しくて落ち込んじゃう。でも沢崎さんは負けたときも笑顔で、暗くならない。チーム戦だから雰囲気を悪くしないようにってアドバイスももらったりして。麻雀観は全然違いますが、尊敬している先輩」と学びを語り、岡田は「すごく気を使ってくれるんです。今期もMVP争いがある中でも堀さんに出番を譲ったり、チームが負けたときでもジョークを飛ばして、楽屋を明るくしてくれていました」と振り返った。麻雀の実力のみならず、時には自らおでんを作って差し入れるなど、サクラナイツのチームワークに大きく貢献していた沢崎の復帰が待たれる。