青春物語が共感を呼ぶ
親友はいるものの、意地悪されることもあって学校ではどこか居場所がなさげなカマラ。それは家庭でも。空想癖を心配していた母親は厳格で、彼女が行きたがっている、アベンジャーズファンが集まる“アベンジャー・コン”への許可は出さない。
兄が説得してくれて、「行ってもいいわ」となるのだが、父が同伴し、コスプレは“ハルク”をイメージした衣装にすることを条件にした。憧れのヒーローであるキャプテン・マーベルのコスプレができないことで思わず強く反発してしまったカマラは両親を怒らせてしまう。
反省し、落ち込むカマラはブルーノに会いに行き、「私みたいな茶色い肌の女の子が世界を救えるわけない」とつぶやく。するとブルーノは「救えるよ。君ならきっと世界を救える」と励ますのだった。
時に人を傷つけ、傷つけられ、悩み多き青春時代。しかし、そばには味方でいてくれる親友がいる。これからヒーローになっていくカマラだが、家族間、友人間の悩みを抱えていることは等身大の女の子そのもので、共感を呼ぶ。授業中に教師の話を聞かずに空想することも、多くの人々にとって、多かれ少なかれ思い当たる節があるのでは。
スパイダーマンとつながりが?
その共感性が、本作のポイントの一つでもある。
キャプテン・マーベルのファンであるカマラ。現実世界の、各ヒーローやアベンジャーズ、あるいはマーベルのファンたちにとって、カマラのアツい思いは理解できるし、そんな彼女がヒーローになるのは、“もし自分だったら”という空想も広がったりして、胸が高鳴る。
両親の目を欺いてアベンジャー・コンに参加したカマラは、キャプテン・マーベルのコスプレに自分らしさとして、祖母の腕輪を付けた。その腕輪によって不思議なパワーが宿ることに。コンテスト会場では力を制御できずに騒動を引き起こしてしまったが、腕が伸びるという力によって人助けもしたし、空を飛べそうな描写もあった。
隣にいそうな女の子がヒーローになる。その物語が幕を開けた。
原作コミックでは、カマラが霧の中で気絶して「キャプテン・マーベルになりたい」と願ったことで力が覚醒するという展開で、ドラマ版とは異なる。腕輪の持ち主であった母方の祖母、さらには空想癖があるという家系の遺伝子が関係する可能性がある。それはこれからのお楽しみだ。
また、ポストクレジット(エンドクレジット後のシーン)ではアベンジャー・コン会場でのカマラの騒動をとらえた動画を知った人物が、「彼女を連行しろ」と言う場面だった。この人物は「スパイダーマン:ホームカミング」(2017年)や「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」(2021年)に登場したクレイアリー連邦捜査官。ヒーローたちの戦いの後処理をする組織、ダメージ・コントロール局の所属だ。このつながりにもワクワクする。
なお、ミズ・マーベルは、映画「キャプテン・マーベル」(2019年)の続編、「ザ・マーベルズ」(2023年公開予定)に登場することが公式に発表されている。ミズ・マーベルが、これからのMCUを盛り上げる中心人物となることは間違いない。これまでMCUに触れてこなかった人は、今作から視聴をスタートするのも良いだろう。
ヴィレッジブックス
発売日: 2017/09/28