小コミュニティが増加、クリエイターがファンから直接収益を得る時代へ
Faniconの「ファンコミュニティ」は、タレント側からの一方向のコンテンツ提供がメインとなる従来のファンクラブと違い、ファンが集まり交流・発信する場自体を作るという考えだ。SKIYAKI武田氏も、そもそもコロナ禍ではファンクラブのあり方自体が変化してきていると指摘した。
「2020年はファンクラブビジネスにおけるひとつのパラダイムシフトでしたが、過去にもこういった変化は数回起きています。かつて80年代のファンクラブはアナログで会報を送っていましたが、ガラケーの普及によって待受や着メロのようなデジタルコンテンツも供給するようになり、スマホの時代ではそれが動画に変わった。そして直接のコミュニケーションが難しいコロナ禍においては、ライブ配信のようにリアルタイムかつ双方向のオンラインコミュニケーションが求められる。クリエイターのニーズ次第ではありますが、今後はメタバース(仮想空間)やNFT(コピー不可のデジタルデータ)等の技術も取り入れていくことになるだろうと思います」(武田氏)
総括して、タレントからファンへコンテンツや特典を供給するだけではなく、ファンからも発信できる双方向性のある仕組みが求められているといえよう。
今後のファンクラブビジネスの見通しについても尋ねたところ、武田氏はこう語った。
「クリエイターの裾野がさらに広がっていくことは間違いないと思います。あらゆる『表現したい人』が、小さな単位でファンを囲っていく図式になるのではないか。そういったコミュニティが無数に存在する形になる」
実際、Faniconでも2,300以上(2022年3月時点)のコミュニティが存在するのに対し、有料会員数は約18万人と、数十人程度の規模のコミュニティも多い。Faniconではコミュニティが盛り上がるのに必要なファンの最低人数を30~50人ほどとしており、従来の規模感のファンクラブとは性質が異なってきていることがわかる。
こういった見通しのもと提唱されるのが、クリエイター個人がファンから直接収益を獲得する経済圏「クリエイターエコノミー」だ。既にYouTuberをはじめとした配信者への投げ銭や、クリエイターへのクラウドファンディングなどは日本でも活発に行われているが、アメリカでは質問に答える、自撮りを送る、生電話などといったメニューにタレントが自ら値段をつけて提供するサービス「Fanhouse」や、タレントに動画メッセージを依頼できるサービス「CAMEO」など、直接収益を得るためのプラットフォームが群雄割拠している。なお「CAMEO」は2022年4月に日本にも上陸済みで、まだ知名度はそこまで高くないものの、徐々に国内でも参入タレントが増加している様子だ。
テクノロジーの進歩に加え、コロナ禍という外的要因によって変化を余儀なくされるファンクラブの在り方。だがそのベースとなる、ファンが自分の好きな対象を応援したいという想い自体はずっと揺るぎないものであり、そのニーズが不変であるからこそファンクラブビジネスは今後も進化し続けるのだろう。
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