名だたる演出家に「天才」と称される演技力
稲垣吾郎、香取慎吾と出演している「7.2新しい別の窓」(ABEMA)、お笑い芸人の海原やすよともこと共演する「草なぎやすともの うさぎとかめ」(読売テレビ)といったバラエティー番組での草なぎは、どこかひょうひょうとしているように見える。
しかし、ひとたび演技となると、テレビ画面、スクリーン、あるいは舞台というライブ空間を通して、そこに生きている人物として浮かび上がってくる。
2020年公開の映画「ミッドナイトスワン」では、トランスジェンダーの主人公を熱演。心と身体に葛藤を抱えて苦しむ姿は、「拾われた男」や「僕の生きる道」でも見せたような真に迫るもので、同作で草なぎは第44回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝いた。
またSNSを大いに賑わせたものとしては、吉沢亮が主演を務めた2021年の大河ドラマ「青天を衝け」(NHK総合)も記憶に新しい。草なぎは徳川慶喜を演じ、吉沢の渋沢栄一との絆は大いに感動をもたらし、「史上最高の慶喜」という呼び声も。その演技で、第59回ギャラクシー賞テレビ部門個人賞を受賞している。
そのほか、2021年公演の舞台「アルトゥロ・ウイの興隆」ではギャング団のボス、映画「台風家族」(2019年)ではクズな中年男、映画化もされたドラマ「任侠ヘルパー」(2009年、フジテレビ系)では介護施設で働くヤクザなどを演じてきた。
舞台「蒲田行進曲」の作・演出を務めた劇作家・つかこうへい氏から「天才」と言われた逸話が残り、脚本家・演出家の三谷幸喜も朝日新聞のコラムで称賛するなど、プロ目線でもその演技力の高さが認められている草なぎ。
どの役も草なぎが演じているのではあるが、一つとして同じような雰囲気を出していない。それぞれの役が生きていることで、見る者の琴線に触れる。どんな役もこなしてしまう、草なぎの演技の底力にはうならされるばかりだ。
8月19日(金)からは新作映画「サバカン SABAKAN」の公開、10月には三谷が脚本・演出を手掛ける香取との二人芝居の舞台「burst!」の開幕、さらに2023年1月期のドラマ主演と控えるが、まずは放送中の「拾われた男」。諭と15年ぶりの再会を果たした武志の秘密が明かされていくのだが、若手演技派として評価が高まっている仲野と草なぎの競演は、きっと見応えがあるものとなっているはずだ。
※草なぎ剛のなぎは、弓へんに前の旧字体その下に刀が正式表記
◆文=ザテレビジョンドラマ部