歌詞を書くことで自分を知ることができる
ユーモアを交えた軽やかな語り口のなかに、音楽への深い愛と創造への強い責任とこだわりが顔をのぞかせる。そうした彼の豊かなクリエイティビティーと、元来持ち合わせている優しさは、LGBTQをテーマにし大ヒットした仏映画『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』エンディング曲として書き下ろした「Changes」の歌詞からも透けて見えてくるようだ。
「僕はフランス、パリが好きだから、テーマ曲を依頼されたときはうれしかったですね。フランス人の2人の監督と話し、会話からヒントをもらいながら曲のアイデアを膨らませました。この曲の主題は、“いいやつになりたい”と“変わりたい”だなと早い段階で決まったので、あとは言葉をリズムや語感などと相談しながら選んでいく感じでしたね。
歌の主人公は、いい奴になれないのは自分が悪い奴だからだと思っているんですよ。悪い奴だからいいやつになりたい、変わりたいと思っている…という、その視点が、自分を投影しているなと感じました。だって、人によっては、自分が悪いわけじゃなくて世の中が変わればいいと思うかもしれませんから。いい世の中にしていこうという考え方と、いい奴になるという発想は、違う視点から出てきているんじゃないかなって。
そうした、普段は踏み込まない領域まで、歌詞を書くことで自分を知ることができるし、傷ついていたんだなとか変わりたいんだなと気づかせてもらえました。タイアップだからこそ引き出されるクリエイションがあるなと感じますね」
EP4曲目に収録されている「Treasure」(ドラマ「家電侍」主題歌)もまた、タイアップだからこそたどり着けた、ある意味で挑戦的な楽曲だろう。ほのぼのとした楽曲だが、一聴してビッケブランカだと分からないほど声に加工が施されている。自分の歌声すら大胆に遊ぶ思い切りの良さも、彼の魅力のひとつだ。
「この曲は、ドラマの監督やプロデューサーとアイデアを交換しながら、個性的な声で歌ってみようという話になりました。出来上がった曲を聴いたときは、みんなで『楽しい曲だね』って大笑いでしたね(笑)。テーマは家族への愛で、僕も家族が大好きだから、すごく素直な気持ちを込めて作れました。
このEPからも感じてもらえると思いますが、いい意味で僕の楽曲には決まった方向性や個性がないんですよね。突飛なアイデアを形にすることも、丁寧に歌うことも、みんなと騒ぐことも好きだし、それは僕自身が望むことでもあります。確か…、宝塚歌劇団の皆さんがモットーとしている『しなやかに凛と』という言葉があって、すごく好きなのですが、柔らかく柔軟性がありながらも強さがある。そんなアーティストでありたいなと」
United 8/24(水)発売 エイベックス 3630円
収録曲●(Disc1)This Kiss/魔法ノアトほか全13曲収録(Disc2)夢醒めSunset/ポニーテイルほか全10曲収録
公式HP
https://vickeblanka.com/