アニメ「メイドインアビス 烈日の黄金郷」(毎週水曜日深夜1:05~、TOKYO MXほか)の第11話「価値」が9月14日に放送された。奈落の大穴アビスを舞台にした独特の世界観と胸打つ物語が話題となり、第1期(2017年)の頃から話題となっている本シリーズ。第2期の今回も毎話放送後には同作のワードがTwitterトレンドに上がるほど注目を集めている。「烈日の黄金郷」編は最終話まで残すところあと1話。今話では怒りに震え、絶望に打ちひしがれるファプタの壮絶な姿が視聴者を釘付けにした。
ベラフからイルミューイへの贈り物
第2期「烈日の黄金郷」編は、150年前の昔、奈落の底にあるという黄金郷を目指した決死隊ガンジャの様子と、現在アビスの深淵を目指すリコ、レグ、ナナチの冒険という二重構造で物語が描かれてきた。過去と現在の記憶、体験がシンクロしつつ、ファプタの成れ果て村襲来、ヴエコの解放により2つの記憶が1つに混ざりだす。その記憶の集約を一身に受けたのが、怒りと憎悪を糧に暴れていたファプタだった。
ファプタの帰還に反応し、かつての記憶がよみがえったベラフは身を犠牲にしながら、ファプタによみがえった記憶をにおいに変えて届ける。その記憶とは、母イルミューイから全ての記憶を受け継いだはずのファプタが知らない、まるで親子のように寄り添うヴエコとイルミューイの姿だった。
成れ果てとなるとき、イルミューイに全てを奪ってくれと願ったベラフだったが、イルミューイはこの記憶だけは奪わず、彼の中に封じられたままになっていた。「今なら分かるよ。君に見てほしくて残したのだ」と、イルミューイから託された願いを理解するベラフ。彼にとってはイルミューイの子どもを食べ、願いを奪い続けたことへの償いだったのかもしれない。しかし、まだ多くの生き残りがいたガンジャの中で、なぜイルミューイはベラフにだけこの記憶を託したのか。ファプタが体感した記憶には、ベラフを見上げるイルミューイの姿もあった。
「なあベラフ。イルミューイはな、お前のことも…」
イルミューイの言葉は最後まで紡がれることはなかったが、彼女のベラフを見上げる幸せそうな眼差しはヴエコに向けるものと変わらぬように見えた。誠実で高潔な精神を持ち、ヴエコとイルミューイを見守っていたベラフもまた、彼女にとって大切な親の1人であったのかもしれない。そんなイルミューイの想いを受けていた自分が彼女の子どもを食べてしまったとなれば、べラフが精神を壊し、罰を欲するのも無理からぬことだったと言えるだろう。
原生生物との戦いは映画並みのクオリティー
自分が知らなかったヴエコとの幸せそうな母の姿。それだけでなく、憧れに満ちた冒険、ベラフという父のような存在。母を冒涜し続けていたとばかり思っていた成れ果ての者は、母に幸せを与えてもいた。ベラフから渡された記憶に、ファプタは自分の成すべきことが分からなくなってしまう。
茫然自失に立ちすくんでいるとき、村の守りがなくなった今が好機と、絶界の原生生物たちが村に侵入し、住人たちを蹂躙し始める。村を滅ぼすことを目的に生きてきたファプタにとっては、役目と存在理由を奪われるようなものだった。憤りに叫び原生生物の大群に挑むファプタだったが、たった1人では歯が立たず、補食され、文字通りその身を削られていく。
このファプタと原生生物との戦いは凄惨、壮絶ではあったが、作画のクオリティー、カメラワークとスピード感の演出が圧倒的で、映画と言っても遜色ない迫力に目が釘付けにされた。この一連のシーンには、Twitterでも「もう映画やん!」「神演出、ぐるぐる回るカメラワークが特に素晴らしい」「OPならともかく本編中でこのクオリティ。最高に度し難い」など、絶賛のコメントが飛び交っていた。