「どうして、うちにはパパがいないの?」
疲れている日は多かったけれど。
娘とわたしは、とても仲良しであった。
娘が4歳の時、ディズニーが大好きな娘とわたしは、ランドの年間パスポートを持つことにした。時間があけば、雨があがれば、ランドに2人でいき、ミッキーの耳をつけて、キャラメルポップコーンをバスケットに入れてもらい、スプラッシュマウンテンへと走った。すぐに疲れたと言う娘を抱き抱えながら、走った。そのあとはミッキーの顔の形のアイスキャンディーを2人で一つ並んで座って食べた。
娘とわたしは、その日も仲良しで、ランドの空気と音楽は、日々の心配を軽減させてくれた。
「ママ」
花火が終わって帰ろうと娘をおんぶしてランドの中を歩いていると、娘が耳元で囁いた。
「ママ」
「はい、聞いてますよ」
「ママ、どうして、うちにはパパがいないの?」
前をみると、家族がいて、その家族はパパらしき人とママらしき人と2、3歳くらいの子どもの3人であった。
「あの人たちのおうちも、パパがいる」と、娘。
「パパかどうかは、わからないよ、知り合いと、知り合いと、子どもかもしれない」
「パパとママだよ!」
まあ、その可能性の方が高いですよね。さすが。
「ママ、あのね、みんなのおうちに行くとパパがいる」
「その、みんな、の使い方は。そうね、みんな、ではないと思います。ママしかいないおうちも、パパしかいないおうちも、ありますので」
「みんなのおうちに、パパがいるの!」
「そうですね、あなたの知っている、みんなのおうちに、パパがいる。そうですね、そうかもしれません」
「どうして、うちにはパパがいないの?」
「聞いて。あなたには、パパ、いるよ。とてもあなたのことが大好きで、大事にしているよ」
「ちがう!」
「違わないでしょう」
「ちがう!うちに、パパがいてほしいの!みんなのうちは、あそびにいくとパパがいる」
「うん、まあね。そうだね。そう。うちには、パパは、いないです」
「ママのうちに、パパがいてほしいの」
「それは、難しくて」
「なんで」
「あのね、パパもママも、あなたを愛してるの、とても。それはわかりますか?」
「うん」
「だけど、パパとママは一緒にいるとケンカしてしまうの、だから、別々のおうちにいるの。おうちは別だけど、その方が仲良しなの。おうちは別だけど、パパもママもあなたとずっと一緒にいるの」
「ママ」
「はい」
「ママ、ケンカしてるの?」
「いや、今は、してないです」
「じゃあ、いいじゃん」
この会話は、何度もしてきた。何度も、娘に、パパとママは別々に暮らしているが一番にあなたをおもっている、と伝えてきた。だが、娘は、よその家族を見るたびに、同じことを伝えてくるのだ。
1973年愛知県生まれ。大学卒業後、フリーアナウンサーを経てタレントの道へ。「どこ見てんのよ!」のネタでバラエティ番組でブレイク。2007年に結婚、2010年に出産。2012年に離婚。現在はバラエティ番組やドラマ、舞台などで幅広く活躍中。
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