キャスティングの決め手は「愛」と「怒り」
キャスティングの決め手について問われた石丸は、「表現する者のエネルギーって『愛』と『怒り』だと思っているんです。廣野くんと会ったときに、怒りをものすごく強く感じた。そして一色くんと会ったときには、愛を表現することに一番迷いがなかった。怒りを強く出せる人は必ず愛も持っているし、愛を表現するのがうまい人は怒りも持っているんです。その2人を錬成すれはエドワード・エルリックができると思いました」と語ると、廣野が「その通りです!」と合いの手を入れる。アルフォンス役の真嶋については「少年時代を演じたり、声だけの演技をしたり、またアニメで皆さんの中にインプットされた声(のイメージ)も強い中で、心と声が近い人を選びたかった。真嶋くんは心が動いたときに、それがそのまま声になってこちらに届けてくれたので、『この人だ!』と思いました。そして、弟として兄を見る目、兄を愛する準備というのを一番感じたんです。なので迷いなく行きました」と太鼓判を押した。
廣野「命と等価交換で行けたら」
各々の演じる役の魅力について、一色は「エドは10代半ばから物語がスタートするんですけども、時々苦労した成人男性しか寄らないような皺が寄ったりするんですよね。舞台でそういうところも表現できたらと思います。触れれば温かい人間がエドを、アルを、ウィンリィを演じる意味が、一番大事な部分になってくると思うので、エドのひとつひとつの表情を、コミカルな表情だけじゃなくて、なぜその皺が寄ったのか、なぜそこで泣かなかったのか、なぜあのときだけ泣いたのか、そういうところを舞台上に温かく立ち上げられたらと思っています」、廣野は「大人になってから改めてこの作品に向き合ったときに、全てがきらめいていて、うらやましかったんですよね。僕たちは困難があったらうまく逃げたり、向き合っているふりをしたり、いろんな選択肢がある中で、エドたちはまっすぐがむしゃらに困難にぶちあたって乗り越えていく。僕ら人間がそれに憧れた上で、キャラを理解して演じる意味に重大な責任を感じたので、(出演が)決まって本当に嬉しかったですし、生半可なものでは絶対にお届けしないので。原作の言葉を使わせていただくと、命と等価交換で行けたらと思っています」と思いのたけを伝えた。
和田「ロイ・マスタングは『深い』人間」
真嶋はアルフォンスについて「優しさが魅力なんじゃないかなと思っています。最後のオーディションで、スーツアクターの方がアルを演じるのに声を当てたとき、アルの鎧の姿である思いだったりとか、『元の身体に戻りたい』というセリフの感情だとか、そこが奥深いところだなと感じて。舞台を通じてしっかり向き合って、アルフォンスに魂を込めて、スーツアクターの桜田航成さんと一緒に、丁寧に作っていけたらと思っています」と述べ、岡部は「ウィンリィはエドたちにとって、精神的なところでも機械鎧(オートメイル)技師としても、2人の大切な支え役になると思っていて。強さの中にも優しさとか、かわいらしさがちょっと見えるのが、ウィンリィのかわいいところなのかなと思いました」と魅力を語った。
蒼木は「小学生くらいの頃、原作を読んだときには『カッコいいお兄さんだな』という印象が強かったんですけども、気づけば僕もロイとほぼ同い年で…大人の余裕とか隠しきれない優しさとか、たくさん魅力の詰まった役だなあと思いつつ、一番は常に心の中で炎が燃えている、それが見え隠れしながらぐっと抑えている、そんな役なのかなと思います。洋ちゃん(一色)も言ってましたけども、生で人間が演じるからこそ届けられるものがあるんじゃないかなと思います」、和田は「ロイ・マスタングという役は、いろんな意味で圧倒的な人間だと思っています。圧倒的って2パターンあると思っていて、手を伸ばしても届かない『高い』人間か、どこまで底があるんだろうという『深い』人間。僕は漫画を読んでロイ・マスタングは深い人間だと思っているので、深い愛情や信念、強さを表現できたらと思います」と役について語った。
生バンドを入れての公演、主題歌の歌唱披露も
今作は生バンドを入れての公演になるとのことで、一色と廣野による主題歌「鋼の絆」の歌唱が披露され、ターンやダンスを交え熱くパフォーマンスする一色と、力を込めエモーショナルに歌い上げる廣野、それぞれの個性が光った。歌い終えると感情をこめるあまり歌詞を間違えた廣野が「石丸さんが作詞してくださったのに、作詞を共同でしてしまいました…」と懺悔するくだりもありつつ、会見は終了へ。最後に一色は「エドは漫画の最初の方で『格の違いってやつを見せてやる!』と言うんですが、最終巻では『俺たちとお前との格の違いってやつを見せてやる!』と『俺たち』が入るんです。今はドキドキも不安もありますが、初日には、舞台ハガレンチーム全員で『俺たちの格の違いを見せてやる』と言い放てるような舞台を一作錬成してみせたいと思います」、廣野は「エドとアルが自分たちの答えを見つけたように、僕たちも舞台『鋼の錬金術師』の答えを皆様の前に提示できたらと思いますので、応援よろしくお願いします」と意気込みを述べた。
舞台『鋼の錬金術師』は2023年3月8日(水)~12日(日)に大阪・新歌舞伎座、3月17日(金)~26日(日)に東京・日本青年館ホールで上演される。