奇想天外だが心温まるストーリーと、2Dアニメ&リアル映像の融合で、子どもたちから映像マニアまで幅広い層を喜ばせたミュージカルコメディー「魔法にかけられて」。アニメーションの世界のおとぎの国“アンダレーシア”から現代(実写)のニューヨークへ追放され、離婚弁護士のロバートと結ばれたジゼルだったが、11月18日(金)から配信される「魔法にかけられて2」は、それから15年後の世界が舞台となる。この2作でジゼルを演じるのが、今や“ハリウッド殿堂入り女優”となったエイミー・アダムスだ。続編の配信を前に、今一度“魔法にかけられて”の世界を振り返ってみよう。(以下、ネタバレを含みます)
意地悪な継母のわなで現代へ
「魔法にかけられて」は、見ているうちに、大昔と現在、自然と都会、人間と動物の境が自然となくなっていくような、なんともユニークで、それでいて親しみやすさに溢れる作品だった。主人公は、アニメーションで描かれたおとぎの国の世界“アンダレーシア”に住む女性・ジゼル。エドワード王子との婚姻も成立したが、それが王子の継母・ナリッサ女王をイラつかせる。
意地悪なナリッサのわなによって、ジゼルは突如現代の米・ニューヨークに迷い込んでしまう。しかも最初に到着した場所は、「活気溢れる」というよりも、誰もがひたすら忙しく早口で話し早足で動き、自動車の音やら工事の音やらでやかましいタイムズ・スクエアの雑踏だ。今はもう跡形もないCD量販店「ヴァージン・メガストア」(筆者の記憶では6階建てだった)が画面にしっかり映りこんでいるあたり、個人的にはなんだか感慨深くなる。
慌ただしいニューヨークの空気に触れて、アンダレーシアにいた頃から着ていた妙にゴージャスなドレスはみるみる汚れていく。セントラル・パークでの一大パフォーマンス(「想いを伝えて(That's How You Know)」に加え、バワリー(パンクロックの聖地といわれたライブハウス「CBGB」があった地域)や、ハウストン・ストリートの大衆食堂「カッツ・デリカテッセン」(歴代大統領も訪れると聞いたことがある)の風景も出てくる。
天真爛漫なジゼル
ジゼルは天真爛漫で、すぐに歌い出す。彼女の中にネガティブな感情はない。他人を値踏みするようなせこいことはしないし、いいと感じたら「いい!」と相手にダイレクトに伝える。アンダレーシアで、真っすぐ成長したのだろう。だからかどうか知らないが動物や虫とも会話することができ(シマリスが大活躍)、離婚に向けていがみあっている夫婦もジゼル効果で仲直りしたりする。
人間社会に来たジゼルがひょんなことから知り合うのが、タイムワーナーセンター(コロンバス・サークルにある、むちゃくちゃ豪華なビル)内のオフィスに勤める離婚歴ありの男性・ロバート(パトリック・デンプシー)だ。彼はコロンビア大学そば、116丁目のアパートメントで娘・モーガンと二人暮らし、新たな恋人と再婚の準備を進めているところだった。そこに身元不詳の、だがやたらとハッピーな女性が舞い込んで、シャワーを浴びたりするのだから、彼や恋人の戸惑いは相当なものだったろう。一度「魔法にかけられて」をご覧になった方は、あらためてロバート目線で楽しむと、また面白い発見ができるかもしれない。
ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
発売日: 2012/09/12