今まで自分がやってきた役の中では一番反響がある
――栗原英雄さん演じる大江広元の政子推しが気になっていますが。
私は「あなたは頼れるけどそういう気持ちはないのよ、ありがとう」とたしなめていくくらいでいいのだろうと思って演じていました。「一方的にどんどん想いを募らせてくれ」とは思っていましたけど(笑)。三谷さんには「もうちょっと受け入れて欲しかった」というようなことは言われて、「大江は政子のこと好きだけど、そういう好きではないですよね」とか言って、笑いながら誤魔化していました(笑)。
――「鎌倉殿の13人」や政子と向き合う中で、楽しいと感じる部分はありましたか。
楽しいと思ったのは、普段の生活で「政子」と呼ばれたことです。好き嫌い含めて自分の役が世の中の皆さんの心を揺さぶるものになって届いているということが、とてもうれしくて励みにもなりました。
私たちはTVの中で作品を作っても実際にどういう方が見てくれていて、どういうふうに楽しんでくれているのか、というのが伝わりづらい部分はあるので、街中で「政子様」とか「ドラマ見ています」と実際に顔を見て言われると、その一言で「来週も過酷なシーンだけど頑張ろう」と思えます。政子は、今まで自分がやってきた役の中では一番反響があるなと感じることができて、感謝していますし楽しかったなと思います。この作品は時を経ても色褪せずに残っていく作品なのだと思いますので、今回見逃した方もぜひ機会があれば見ていただけたらと思います。
三谷さんの脚本のすごさを感じました
――これまでの放送の中で、一番印象に残っているシーンはありますか?
落ち込んでいる義時の元に餅を持っていって、「なんだか首を絞めたくなるのよ、小さい時から」と言いながら笑い合っているシーンは、今もあそこに戻りたいと思うほど好きなシーンです。昔の義時と何も変わらないという安心感を感じられて、たぶん今の義時からはあの笑顔は引き出すことができないと思うので、あのシーンが義時を笑顔にすることができるギリギリのラインだったのかなと思います。
あとは、和田義盛を討ったシーンも印象的です。実朝が和田のことを他の御家人たちの前でかばった時は、それは鎌倉殿として言ってはいけなかったのではないかなと、オンエアを見ながら改めて思いました。もしかしたらあのかばう言葉さえなければ和田は滅ぼされなかったかもしれないとか、みんながすれ違い始めたことの集大成のようなシーンだった気がします。いかに言葉が大事かということを感じましたし、直後の義時の「これが鎌倉殿に取り入ろうとしている者の末路だ」という言葉などには三谷さんの脚本のすごさを感じました。