コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、殺人を犯した死刑囚が看守と過ごす“最後の晩餐”を描いた漫画『今日死ぬ彼とケーキを食べる話』をピックアップ。作者であるかもみらさんが前編を10月23日に、後編を10月25日にTwitterに投稿したところ、あわせて12.1万以上(12月4日現在)の「いいね」が寄せられ大反響を呼んだ。この記事では、かもみらさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについてを語ってもらった。
“最後の晩餐”にホールケーキを選んだ理由とは 真実が明かされる後編も話題に
実兄とその妻を刺殺し、家を燃やした罪で死刑囚となったパウル・フォン・ラングナー。死刑当日、本人が希望する食事が与えられるシステム・“最後の晩餐”で何が食べたいかを尋ねにきた看守に、パウルは死んだ兄の姿を重ねていた。最後の晩餐として看守に「あんたとホールケーキを食べたい」と伝えたパウルは、用意されたケーキにろうそくを立て、看守に火を吹き消させた。
ケーキを半分に分け、幸せそうに食べるパウルはこれから死に行くとは思えないほど普通で、殺人鬼にはとても見えなかった。他愛もない会話をして過ごす中、「死ぬのが怖くないのか」と尋ねる看守に「『生きる』ことの方が怖い」と答えるパウル。ついに約束の時間が訪れると、パウルは「またね」と笑顔を見せて死刑台へと向かっていった。最後の晩餐にパウルがホールケーキを選んだ理由とは。そして、「またね」の意味とは…。
パウルの意味深な言動が謎を残し、読み手に背景を考察させる構成で話題を呼んだ本作。後編はパウル目線でのストーリーが展開され、事件をおこすきっかけとなった出来事や心の内などが明かされており、Twitter上では「とても切ない」「そういう事だったのかと同時に悲しい」「泣ける」「胸が締め付けられる」「後編見たら絶対に前編読み返したくなるやつ」「これから看守は、誕生日が来てろうそくをふくたび、彼のことを思い出すのかな」などのコメントが寄せられ注目を集めている。
「幸せな物語にはない心の機微を描きたい」作者・かもみらさんが創作の裏側を語る
――『今日死ぬ彼とケーキを食べる話』を創作したきっかけや理由があれば教えてください。
最近見た記事で、死刑囚の最後の晩餐という制度について知ったからですね。アメリカの刑務所の一部で採用されている制度らしく、死刑囚っていうのは死刑になるくらい悪いことをした人たちなんだけど、死ぬ最後の瞬間、その一瞬くらいは人間らしくいさせてあげよう、最後の人権を尊重しようってことで、何でも好きなものを作って食べさせてあげるらしいんです。
日本の場合は死刑執行は当日朝に知らされてそのまま刑場に連れていかれるらしいので、この制度はないんですけど、もしそういう制度がある場所で、そういう場面に出くわしたとき、一体何を思うんだろうか、とか、そんな感じのことを思ったのがきっかけですね。
――『今日死ぬ彼とケーキを食べる話』では、死刑囚であるパウルが看守に死んだ兄の姿を重ねてしまう様子が描かれています。パウルや看守のキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
友達との会話の中で生まれたキャラですね。よく友達と話をしながら作業したり創作したりするんですが、今回のキャラもその中で生まれました。
――Twitterで本作を公開後、後日公開された死刑囚目線の漫画もあわせて12万を超える「いいね」が寄せられました。また、パウルの意味深な言動の数々に読者からの考察も相次ぎましたが、今回の反響について率直な感想をお聞かせください。
たくさんの人が私の作品を見てくれてとてもうれしいです。漫画を描くたびに思うんですが、やっぱりいろんな人が私の作品を読んでくれて、色々なことを考えてくれるというのは中々に感慨深いものがありますね。考察してくれてる人たちなんかは、私の考えてる以上の意味を深読みしてくれたりもして、そういうのを眺めるのも楽しみになっています。
――『今日死ぬ彼とケーキを食べる話』の中で、かもみらさんが特に気に入っているシーンやセリフがあれば教えてください。
またね、のシーンが気に入ってますね。いい笑顔が描けたと思います。
――かもみらさんは本作以外にも『海に落ちていた「モノ」を売る人魚』や『君の幸せを願っています』など、多くの作品で“命”にまつわる人間の心情や、愛する人に先立たれた人物の“その後”を描いているのが印象的です。イラストや漫画執筆全般におけるかもみらさんのこだわりや、創作の際に意識していることがあれば教えてください。
私実はハッピーエンドが大好きなんですよ。どっちかというとバッドエンドは苦手なんです。ちょっと鬱っぽいアニメとか漫画とか見ると、うわーハッピーエンドにならないかなーとか、幸せになってくれーとか思ったりしてるんです。こういうと意外に思われることが多いんですよね。結構暗めというか、死別したりとかそういう作品が多いのでバッドエンドビターエンド大好きなんじゃないかとそういう風に思われがちというか。でも実際のところは幸せになってほしいなーと思ってるんですよ。
そう思ってはいるんですが、それはそれとして、すれ違った思いであったり、無くしたものに縋りつく心であったり。幸せな物語にはない心の機微というか、そういったものを描きたいという思いもあり。かわいそうだなーと思いながら描いてますね。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
これからも色々と漫画を創作していくので、よかったらまたしばらくお付き合いくださいね。
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