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在米14年の大江千里、NYから“ソロめし”レシピ本を上梓 デビュー40周年はファンとの“リユニオン(同窓会)”を!

2022/12/02 16:00

「このレシピ本は誰かの心を少しでも温かくできるようにと思って作った」

数々の名レシピが誕生したブルックリンのキッチンで
数々の名レシピが誕生したブルックリンのキッチンで

――本書では料理の作成だけでなく、テーブルコーディネートや撮影、レシピに合う曲の提案まで、一人何役なのか…全てご自身でなさっていますね。

盛り付けはやっぱり「映え」も気にします。食べる量の4割ぐらいだけを小さく中央に盛ったり。手順カットとかも撮っといた方がわかりよいかなとか。影が入らないように注意するんだけどやっぱり入っちゃう。実際には音楽がかかってると集中できないので無音です(笑)。書籍化にあたっては、編集の方に「明かりがちょっと足りないので、もう一度追撮していただけないでしょうか?」って言われたものなど、改めて初心に戻り同じ材料を買ってきて作り直し&再撮影しました! SNSに料理写真を載せていると「おいしそう、作ってください」とアメリカの知人家庭に呼ばれたときに作ったりもします。この前も調子に乗ってピザを作ったら、おいしいって好評でした。「大江屋、出張サービス大成功!」なんてブログに書いています。

――人を喜ばせたいという思いは根っからのエンターテイナーですね。一緒に渡米して以降苦楽を共にしてきた、ダックスフントのぴーすのご飯とおそろいのレシピにも、サービス精神や優しさがみなぎっています。

彼女は2008年に1歳で僕と一緒に渡米して、今は人間で言えば96歳らしい。目が見えなくなってきましたが、よく動き食欲旺盛です。彼女が一日も長く元気でいられるように食事を作っている面もあります。タイトルは「ブルックリンでソロめし!」ですが、ぴーすは大切な家族だから、彼女のごはんを中心に材料が決まります。ジャズ学校の学生だった時、なかなか思うように練習が進まなくて煮詰まると、じっと僕を見守ってくれていました。思えばそんなぴーすの存在があったから、僕も無事学校を卒業できてジャズの道を進めているので、お世話になった分彼女のためならと今はお返しの日々です。なので、食事もぴーすご飯ありきで、僕はそこから「ちょっと失礼!」ってスティール(=盗む)しているだけ(笑)。彼女は、目が見えなくても気にしない! 見えないと思ってないくらい楽しそうに過ごしている。その分、耳や鼻の感覚が長けてきてる。その姿を見ていると「できない」ことを嘆くんじゃなくて、例えば僕も指が動かないとか、肩がつらいとかがあっても、「今ある能力を最大限に活かせれば、いいじゃないか、楽しく弾こう」と思えてくるのです。

――ぴーすの存在は、創作活動にも影響を与えているんですね!

ツアーに行くときも、マネジャーに抱っこされながら僕の演奏を側で聴いています(笑)。大変な時代になりましたが、今でもこうしてお互い生きていられることの幸せをかみしめています。例えばこのレシピ本は、誰かの心を少しでも温かくできるようにと思って作りました。

――2023年5月21日には、デビュー40周年記念日を迎えられますね。この40年を振り返っていかがですか?

「REAL」(‘85年)の頃、「詞が書けない!」ってしょっちゅう悩んでいたのがまるで昨日のことのようです。シングル「ワラビーぬぎすてて」とアルバム『WAKU WAKU』でデビューしてから40周年です。自分が作ってきた音楽の歴史を振り返ると新しい発見がありますね。全身全霊で音楽を作ってきて、やり尽くしてアメリカに渡った。当時作っていたポップスは僕にとって今だから大きな意味を持ちます。その後の人生のジャズピアニストの歴史は継続中ですが、あの頃作った楽曲からヒントをもらったりしています。ポップスもジャズも、僕の大事な生き様です。来年、40周年はリユニオン(同窓会)や、ホームルームにもう一度参加するような感覚で、未来を刻むアルバムを作れないかなと模索中です。

――新アルバムの構想、そして今後に向けての夢を聞かせてください。

レコーディングの場所はニューヨークになるか、東京かヨーロッパかなどもまだ決まっていないのですが、基本はソロとトリオ編成で、ジャズのフィールドでポップの素敵なエッセンスがいっぱい詰まった大江千里にしか作れない音楽を。80年代後半の、クリエイティビティが高まっていたころの感覚でジャズを表現できたらいいなと思っています。12月の日本でのブルーノート、コットンクラブでのライブが終わると今度は、そのニューアルバムのレコーディングですね。ぴーすがまだ元気なうちに一緒にアメリカを車で旅したい。アメリカは不安な時代になってきているし、ご存知のように音楽業界はサブスク全盛で、今までのようにはいかなくなってきてます。それに加えて、ポストコロナでジャズのベニュー(会場)が機能しなくなってきています。僕の知人のミュージシャンも次々ニューヨークを離れて、次の拠点をマイアミやストックホルムやバルセロナなど、ニューヨークの外へ移している。これだけリモートワークができる時代になったんだし、生き方や幸せの感じ方などはガラっと変わってきますよね。明日のことは誰もわからないけれど、これが最後って思えるほどのおいしい!を重ねていけば、また新たなストーリーが始まるのではと信じています。

手作りサンドイッチを片手に笑顔
手作りサンドイッチを片手に笑顔

大江千里 プロフィール

おおえ・せんり=1960年9月6日生まれ。1983年に関西学院大学在学中にシンガーソングライターとしてデビュー。2007年末までに45枚のシングルと18枚のオリジナルアルバムを発表。2008年、愛犬ぴーすと渡米しNYの音楽大学に留学する。2012年、卒業と同時にPND RECORDSを設立し、これまでに『Boys Mature Slow』(2016年)、『Boys&Girls』(2018年)、『Hmmm』(2019年)、『Letter to N.Y.』(2021年)など、7枚のアルバムをリリース。来春40周年記念アルバムを発売予定。

取材・文=magbug

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

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  • NY在住のジャズミュージシャン・大江千里が初のレシピ&エッセイ本を出版!
  • 【写真を見る】大江の愛犬で、ダックスフントのぴーす
  • 手作りサンドイッチを片手に笑顔
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