(松任谷)由実さんはわずか3時間で「できたよ」。そして『いま、この場でメロディーを歌うから覚えて』と
一方で、日本のポップミュージック・シーンをけん引してきた先人たちとのコラボレーションは、スリリングで刺激的なものだったようだ。松任谷由実と作った「かたつむり」の制作エピソードは、聞いているだけでもかなりドラマチックだ。音楽という共通項があるからこそ叶う、ジェネレーションや関係性を越えた真剣勝負をかいま見せてくれる。
「2年前、由実さんに作曲をお願いした『かたつむり』は、誹謗中傷に深く傷けられた人を知り、心を痛めていたときに湧き上がった思いを詞に綴ったものです。書きあげた詞をメッセージアプリで由実さんに送ると、わずか3時間後くらいに『できたよ』と返事がきたんです。それで、武部さんと一緒にスタジオに入ったのですが、由実さんから譜面を渡され、
『いま、この場でメロディーを歌うから覚えて』と。いきなり覚えてと言われて、内心ものすごく面喰らいましたよ。嘘でしょって。師匠と弟子ではありませんが、由実さんに5回以上は歌っていただくわけにいかないなと思い、冷や汗をかきながら必死に覚えました。由実さんが私のために作ってくださった、その気持ちに私も精一杯応えたいと思い集中して頑張りました。いざとなると、覚えられるものですね(笑)。
後日、アレンジする段になり、ミュージシャンがスタジオに集められましたが、今度は、思いもよらないアレンジ対決がはじまって…。当初、由実さんは吉田拓郎さんなどを彷彿とさせるような、フォーキーなアレンジをイメージしていたようでした。私はもっとカントリーっぽい、冒頭のギターがもっと力強いアレンジを考えていました。スタジオで、ミュージシャンの皆さんに演奏していただき、聴き比べた後、由実さんは『私の負けね。あなたの言う通りだわ』と言ってくださいました。負けたというのは由実さんの優しさだと思いますが、そのおかげでコーラスでも参加してくださいました。本当にすばらしい先輩なんです」
収録曲
1. 僕をみて
2. 腕枕
3. ⽿をすます
4. i²
5. カノン
6. 6分
7. ⿊縁メガネ
8. ダイスキダイキライ
9. かたつむり
10. あひるの涙
11. あうん
ひととよう=1976年東京都出身。2002年「もらい泣き」でデビューし、各賞を受賞。NHK紅白歌合戦にも初出場する。2004年「ハナミズキ」が大ヒットを記録し、その後も話題作をリリース。デビュー前から音楽療法にも興味を持ち、病院や児童養護施設などでの歌唱も行っている。「一青窈 20 th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE ~アリガ二十」が12/25(日)にWOWOWプラスにて放送
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