「第35回東京国際映画祭」TIFFシリーズ部門に出品され、ワールドプレミア上映も実施されるなど世界からも注目されるヴィレッジ・サイコスリラー作品「ガンニバル」が、12月28日(水)にディズニープラスの「スター」で世界同時配信を迎える。同ドラマは、累計200万部を超える二宮正明の大ヒット漫画シリーズを実写化した作品。のどかな村「供花村」に駐在として着任した警官・阿川大悟(柳楽優弥)が、“この村では人が喰われているらしい…”という、恐ろしいうわさの真相を探る。そんな本作で、主人公・大悟の妻・有希を演じるのが、ドラマに映画、CM、グラビアと幅広いジャンルで天井知らずの活躍ぶりを見せる吉岡里帆だ。そんな彼女の魅力を、幅広いエンタメ作品に精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が紹介する。
「ガンニバル」は“狭い村社会”での世界規模の作品
「ガンニバル」といえば、知らずにページをめくると目を覆いたくなるような過激な描写、スケール感、迫力のストーリーで、「実写化は果たして可能なのだろうか」的な雄大なスケール感で迫ってくる人気コミック。これを今回、鮮やかに実写化したのが片山慎三監督(「岬の兄妹」「さがす」)と、世界を席巻した「ドライブ・マイ・カー」で第74回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞した脚本家・大江崇允のコンビ。
「誰も知らない」など、世界的に演技力が評価されている柳楽が、都会から遠く離れた山間の“供花村”に、家族と共に赴任した主人公・大悟に扮(ふん)する。村にやってきた彼を襲うのは、世にも恐ろしく、あまりにも不可解な出来事の数々。大悟はやがて、何もかも信じられなくなっていく。そんな大悟の妻・有希を演じるのが吉岡だ。
大悟の精神がアップダウンする分、有希にはより冷静沈着な部分や優しさが求められる。それによって大悟とのコントラストが増し、描写に奥行きが深まる。筆者はまだ未視聴だが、聞くところによると少しキツい口調で大悟をたしなめたり、吐き捨てることもあるとか。夫婦なのだからそれはそうとも言えるが、強そうに見えて実は繊細な役の似合う柳楽“大悟”とのコンビネーションに注目したい。
吉岡里帆とはどんな人か
吉岡に関するバイオグラフィーはちょっと検索するだけでドバっと出てくるが、つまるところ、幼い頃から一流の文化や芸術に触れることのできる環境にあり、そこに持ち前の知的好奇心が加わって、今日の彼女の骨格ができた。さらに興味深いのは「役者になりたい」とか「テレビに出たい」ではなく、「芝居が好き」という気持ちが彼女を表現者にしたということだ。筆者は2021年に東京・下北沢の本多劇場で行われた演劇「M&Oplaysプロデュース『白昼夢』」に足を運んだが、その声の張り方、舞台映えする動きに、「演劇の醍醐味(だいごみ)を知っている人の演技」を見た。
話はちょっと飛ぶが、例えば「悲しみにくれる」シーンがあるとしよう。テレビではじっと涙を流せば、その涙にカメラが寄ってくれるかもしれない。だが舞台はそうはいかない。客席から涙なんか見えない。だから顔をしぼめ、しわくちゃにして、両腕の袖を目に近づけて何度も左右にずらしながら、声に抑揚をつけて、じんわりじんわりと悲しみを表現していく。