「ある種暴力だったりもするけど、戦いだったりもする」佐久間が語る“笑い”
ーー佐久間さんとしては今回、「笑いってなんだ?」というテーマを表現したかったのでしょうか。
別に「笑いの力」というのを深刻に考えてはいませんでしたが、エンタメや笑いには、できることとできないことがあるじゃないですか。それをコロナ禍でいろいろ思ったこともあって。
あとは、いろんなものをコケにしたり、笑いにしたりするっていうのって、ある種暴力だったりもするけど、戦いだったりもする。そういうところをこの作品だったら後半に入れられるなと思っていたら、脚本を手がけてくださったオークラさんが見事に入れてくれましたね。
ーー最近ではコンプライアンスなども厳しくなっているかと思いますが、昔と今とで、“お笑い”について変化を感じることはありますか。
昔は、シニカルな笑いや社会批評が内包されたものが、もっと多かった気がします。僕は“ないまぜ”になったものが好きで。社会状況も入ってるし、いじっちゃいけないものも入ってるし、さらには単純にネタとして面白い。それら全部が曖昧な境界の中に内包されて、オリジナリティーがあるようなものが好きなんですが、そういった笑いは少なくなっていますよね。
もちろんみんなめちゃくちゃ面白いけど、今はセンスや演技力とか、受け手が気持ちよく笑える方にシフトしている。それはそれで面白いのですが、個人的に見たいと思っているものが少なくなってるので、作ってみたいという気持ちがありました。
佐久間が感じる受け手側の変化「短くてすぐ理解できるものじゃないと勝てない」
ーーたしかに、“いろんなものがごちゃ混ぜに内包されているもの”に対して、最近では笑いにも“わかりやすさ”が求められることが多いと思います。そういったものを求める受け手側の変化を、佐久間さんご自身はどのように感じますか。
SNSの文化が発達すると、やっぱり短くてすぐ理解できるものじゃないと勝てない。それは自分でYouTube (「佐久間宣行のNOBROCK TV」) をやってるとすごくわかるんですよ。「これは面白いな」と思ったネタが意外と回らなくて、“サムネでガツンと理解できて、サムネ以上のことがそんなに起きないもの”の方が回ったりとか。本当はサムネを裏切りたいじゃないですか。でも、サムネを裏切ったものって逆に回らなかったりするから。だからYouTubeでも、難しいなと思いながらも戦ってます。
だからこそ、今回の「インシデンツ」で作りたかったのは、視聴者が「あれ〜?」というような気持ちになったり、裏切ったり裏切られたりしながら見ていくというものなんです。なので、最後まで見てもらえたらうれしいですね。ストーリーの展開は、みなさんが予想できないものになっていると思います。
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