母親としての“強さ”を見せる役柄
言葉を発せず、感情も見えないましろのことを「何考えてるか分かんない。母親失格だと思うけど…」と大悟に話すシーンがあるが、第2話で大悟の留守中、後藤恵介(笠松将)ら後藤家の連中が猟銃を持ってやってきた時も、おびえたりひるんだりせず、しっかりとましろを守る姿勢を見せたところに“母親”としての強さを感じた。第3話では狩野の失踪事件に深く関わり過ぎる大悟にストップをかけ、第4話で大悟に別の村への赴任話が出た時にはましろの意見を優先させるなど、冷静な判断ができるところも有希の魅力となっている。
嗜めたり、いら立つ気持ちを直球で(しかも割と口調も荒く)ぶつけたり、大悟に対しては感情を表に出す時はしっかりと出すが、大悟の不用意な発言で供花村のリーダー的存在のさぶ(中村梅雀)を怒らせた時には率先して謝りに行こうとするなど、阿川家が供花村で普通の生活を送るためにも有希は不可欠だと分かるシーンが多く見られる。
今作では感情を振り切る狂気を演じる柳楽の演技をはじめ暴力シーンなど過激な描写が目立っているが、いろんな感情を抱え、それを垣間見せる有希を演じる吉岡の表現力も目を見張るものがある。
◆文=田中隆信