モデルとしてデビューして以来、活動の場を広げ、女優として活躍を続ける岡本玲が主演を務めた映画「茶飲友達」が、2月4日(土)より劇場公開される。本作は、映画「ソワレ」のヒットなどで注目を集める監督・外山文治の最新作。現在、CMやドラマ、舞台などでさまざまな顔を見せている岡本だが、今回「映像メディアが捉えていない、舞台でのような岡本玲の演技を撮りたい」という外山監督の声を受け、ワークショップ・オーディションで主演を獲得。15年ぶりの主演映画公開となる岡本に、本作の魅力や、オーディションや撮影中のエピソード、今作鑑賞後の感想や芸能活動20周年となる自身の現在地について語ってもらった。
高齢者売春クラブ摘発事件に着想を得た社会派群像劇
今作は「カメラを止めるな!」のブレイクで有名になった「ENBUプロジェクト」の第十作記念作品。ワークショップオーディションで俳優たちを選出する同企画の今作には、過去最多667名がエントリーし、33名の俳優が選出された。
ストーリーは、外山監督が2013年に報道された高齢者売春クラブ摘発事件に着想を得て、脚本も担当したという社会派群像劇。10年をかけて映画化したというその物語では、高齢者売春クラブの運営者が実際の事件から若者たちに変更され、「茶飲友達、募集」という新聞の三行広告を使った売春ビジネスに関わる高齢者たちと若者たちの孤独と寂しさ、閉塞感、またそれを埋め合うような互いの触れ合いが描かれていく。
主演の岡本が演じたのは高齢者専門の売春クラブ「茶飲友達(ティー・フレンド)」のリーダー・佐々木マナ。自身も心に傷を持ちながら、同クラブの高齢者コールガールや若手の運営スタッフたちをファミリーと呼び、積極的なフォローとカリスマ性で一団を引っ張っりながら絆を育んでいく。
監督・外山文治から言われた「舞台の岡本玲が撮りたい」
――2日間で、1日8時間の計16時間をセリフ読みし続けるというワークショップオーディションで主演を獲得したそうですね。参加者の人間性を掘り下げるセラピーのような内容だったと聞いていますが、いかがでしたか?
私は舞台の稽古などで、「弱い所を含めて自分の全部を出して」と言われてきたことがあったので、「(今回は)そっちか」っていう感じでした。でも、それって心の防御壁を全部取り払った自分の“核”を見せる感じなので、少しの失敗で自分の“核”が傷付いてしまうリスキーさもある。それを恐れずに楽しめるかという闘いだったのかなと思います。少しでも自分を守った人がより傷ついてしまうみたいな場所だったのですが、「どんな自分であってもいいという強さ、図太さ、そういう“核”が無いと役者はダメなんだ」という感覚で、外山監督とは通づる部分があったと思います。
――外山監督は、今作にも出演している中山求一郎さんとの二人舞台「ダニーと紺碧の海」を見て岡本さんに興味を持ったと聞いていますが、ワークショップの時から2人のタッグぶりには手応えがあったんですね。
いや、外山監督はワークショップで他の参加者たちに「もっとアナタで居ていいんですよ」とか「言いたくないセリフは言わなくてもいいんですよ」とか、「自分のままで居てください」とかいろいろ言っていたのに、私には「上手いですねー」と「なるほどー」だけしか言ってくれなかったんです。芝居でコミュニケーションを取ったのは、それが初めてだったので、そのそっけなさに悩みましたね(笑)。
ただ、外山監督は「ちゃんとセリフを発することができる役者が好き」なんだそうです。その人自身をさらけ出すお芝居を好まれるのに、そこには巧みさも必要だと。あべこべなようで、難しいなと思いました。でも、確かに私は、あえてボソボソ喋る演技がリアルだ、ナチュラルだという芝居はあまり好みではないかもしれません。これまで舞台を経験してきた中で、脚本に書かれたセリフはちゃんと言葉としてお客様に届けるということを大事にしてきたタイプなので、そういう所を求めて貰えたなら嬉しいなと思いました。
――クランクイン前、「舞台でのような岡本玲を撮りたい」と、外山監督はおっしゃってましたね。
そうですね、「見せたことのない顔を撮りたい」ともおっしゃっていただいて、本当に「外山監督ありがとうございます!」って思っています。また、これまで映画で活躍したいと思っていながらなかなかご縁もなく、掴みとれなかった私なのですが、今作が決まって監督と話した時に「あなたは映画で活躍しますよ」って断言していただいたんです。「魅力が伝わっていないだけです。僕が撮ります」って、おっしゃってくださって、カッコいいですよね。そう思ってくれる監督に出会えたことが幸せですし、本当に財産だなと思っています。
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