コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、高校生の男女が境遇に阻まれながらもそれぞれの夢をまっすぐに追いかける姿と、そんな2人が10年後に再会するまでを描いた漫画『車輪の唄』をピックアップ。
作者の天野リサさんが、1月25日に本作をTwitterに投稿したところ反響を呼び、7,100以上の「いいね」が寄せられ話題を集めている。この記事では、天野リサさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについてを語ってもらった。
記者を目指す晃彦と足の悪い梅子 親に反対されるも諦めず夢を追う2人の物語
山に囲まれた田舎町で暮らしながら、東京で記者になりたいという夢を抱く高校生の晃彦。ある日、近所に引っ越してきたお金持ちの主人から、足が悪く松葉杖をついて歩く娘・梅子を毎日学校まで送迎してほしいと頼まれる。上京するための資金を集めたい晃彦は主人からの“仕事”を受け入れ、毎日梅子と自転車で2人乗りをして通学するようになる。
梅子と出会って2年が経ち、あと半年で卒業という頃、貯めていたお金が母親にばれて叱られる晃彦。東京へ行って記者になりたいという夢を伝えるも母親の理解は得られず、農家の長男であることを理由にきつく反対されてしまう。そんな中、梅子が足の治療のため一人で上京することを知り、晃彦は悔しさをにじませる。
出発の日、駅へと自転車で向かう途中に晃彦は悔しさから梅子に厳しい言葉を向け、ぶつかり合う2人。その瞬間に自転車が故障し、自宅に帰らざるを得なくなってしまう。しかし梅子は上京することを親に知らせず黙って出てきたことを明かし、家に戻ることを拒む。いつになく必死な様子に心を動かされた晃彦は、梅子を抱えて急いで駅へと向かう。そして無事機関車に乗った梅子に、晃彦は東京での再会を約束する…。
取り巻く家庭環境や境遇に阻まれ、互いにぶつかり合いながらもまっすぐ夢を追いかける高校生たちの姿を真摯に描いた本作。ラストには2人の10年後の様子も描かれ、Twitter上では「心がジーンとする話」「素晴らしい漫画」「思わず泣いてしまいました」「良い」「足が疲れたわ…その一言がすごく重い」など、読者から多くの感想コメントが多く寄せられ、反響を呼んでいる。
「言葉よりも表情や仕草での感情表現を」作者・天野リサさんが語る創作の裏側とこだわり
――『車輪の唄』を創作したきっかけや理由があれば教えてください。
大学の課題で制作したネーム(原稿前のラフ)がきっかけでした。“駅”をテーマに作るという課題だったので、駅で別れた幼なじみが大人になって再会する話を書こうと考え、またそこにBUMP OF CHICKENの「車輪の唄」の楽曲のような雰囲気やイメージを絡められないかと思い制作しました。それを加筆、清書し卒業制作として完成させたのがこちらの作品です。
――晃彦と梅子それぞれのキャラクターや、物語の背景となる設定はどのように生み出されたのでしょうか。
二人のキャラクターができたのはかなり遅かったです。“二人が別れてまた出会う(プラス、電車と自転車が出てくる)話”というプロットは決まっていたので、そこから“二人乗りが合法な時代”であることと、“変化の激しい高度経済成長期の方がラストの10年にギャップが生まれるだろう”という点で、時代設定を昭和中期ごろに決め、そのあとキャラクターとドラマを考えました。舞台が先に決まっていたからこそ、環境に阻まれて苦しむあの二人のキャラクターができたのだと思います。
――本作では、晃彦と梅子の心の内を繊細に表す表情描写も印象的です。作画する際にこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあれば教えてください。
感情表現を言葉ではなく、なるべく表情や仕草で表現することをこだわりました。雪の夜に家出をする梅子と、事情を知らないで運んでいる晃彦の会話は、改めて読んでもらうと梅子の表情の印象が少し変わる部分だと思うので、読み返して頂けたら嬉しいポイントです。
――本作の中で、天野リサさんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?
梅子が地を這いつくばって叫ぶ「ふざけんな!!!」のシーンから、別れのシーンまでです。ここに至るまでが鬱々としていたこともあり、描いていて清々しく感じました。ここを描くために作品を描いていたふしがあります。
――天野リサさんは本作以外に、盗人と魔女の物語『ウィッチ&シーフ』や除霊師が主人公の『継-KEI-』などの漫画を描かれていますが、漫画創作全般においてこだわっていることや特に意識していることがありましたらお教えください。
“気持ちのいい漫画を描きたい”という意識はずっと持っています。「読んでよかった」と思ってもらえるのが一番嬉しいので…!
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
商業でも個人でもたくさん作品をあげていきたいと考えておりますので、読んで頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。