天才助手・美神アンナ(広瀬すず)と自称・天才…実際はポンコツ探偵の風真尚樹(櫻井翔)が絶妙なコンビネーションで探偵事務所「ネメシス」に舞い込む依頼を解決するドラマ「ネメシス」。本格的な謎解きミステリーでありながらも、風真とアンナ、そして「ネメシス」社長の栗田(江口洋介)と、周りを固める濃いキャラたちとのコミカルなやり取りや、独特の世界観がクセになる視聴者が続出し、2021年4月クールに放送されたドラマ中、夜10:30スタートにもかかわらず、コア視聴率(13~49歳)2位をマークした。
映画「ネメシス」は、夢と現実が幾重にも重なる「何だコレ!?」な世界観
続編を期待させるようなラストシーンから約2年―彼らが映画で帰ってきた。しかし、そこは独自スタイルを貫いてきた「ネメシス」、ドラマの映画化にありがちな「海外ロケ慣行!」「史上最強の敵登場!」といった単にスケールアップしただけの内容になるはずがない。そこにはプロデューサーの北島直明氏(以下、北島P)の「単なるドラマの延長ではなくて、1本の映画作品として成立させたかった」という想いがあった。
『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』の脚本は「アンフェア」シリーズなどを執筆した秦建日子。現実と夢の世界が多重構造となって展開していく「ハッキリ言ってわかりにくい」(北島P)ストーリー。
あれから2年―「ネメシス」は依頼が激減し、経営難に陥っていた。そこへ「誘拐されたペットを取り返してほしい」という超高額の依頼を受け、張り切って調査を進めるアンナと風真。だがそんな中、アンナの目の前で男が襲撃され、その死体が跡形も無く消えるという不可解な現象に遭遇する。「ペット誘拐」と「死体消失」…2つの事件の関連性を探る2人。しかし真相に迫るたび、彼らの周りの人々が生命の危機にさらされることに。それは、アンナが何度も見る悪夢とも連鎖していた。彼女がこの連鎖する悪夢を見るようになったのは何故なのか、そして、どうすればこの夢を止められるのか、この一連の事件の背後にいる「本当の裏切り者」は一体誰なのか…最後の最後までどうなるのかわからない緊張感が続く作品となっている。
俳優陣は何を撮ってるのかよくわからないまま演じていた!?
「タイムリープでもないし、死んで生き返って…を繰り返すんでもないし、映画『インセプション』(夢の世界を舞台にしたサスペンス)みたいなのでもないし、何だコレ!?という世界観」(北島P)で、誰もが「1回読んだだけじゃ、全く理解できなかった」と言う、ある意味問題作。北島Pが「アノ3人(櫻井、広瀬、江口)も撮りながらよくわかってなかったと思います」と言えば、「俳優陣も、コレ、現実とどうリンクするんだっけ?今、夢(のシーン)だっけ?って混乱しながらディスカッションして進めてました」と入江監督も撮影時の様子を振り返る。
監督は「パズルみたいな脚本なんで、1つのシーンを撮り終えて“よし!”って感じにはなれないんですよ(笑)。こことあそこが繋がって化学反応が起きて、やっと“よし!”と。だから、映画館(という限られた空間)での観客の集中力を信頼して作っている部分はありますね。一瞬を見逃すと“あれ?”となるような、ちょっと能動的に観る楽しさをお客様に要求するものになっている手ごたえはあります」と、新鮮な映画体験を観客に予告した。
そして、北島Pも「ふだん映画館に行かない人が、ドラマをきっかけに足を運んで、“映画って面白い”ってなってくれたら、すごく嬉しい。観終わった後に、友だちとかと“あのシーンって…”って話し合えるような作品にしたかったし、そうなってると思います」と語った。