「知ってる『ネメシス』じゃない!?」
弊誌取材班が入った現場では、その後何度も繰り返し登場してストーリーのキーとなる本編の最初のシーンを撮影していた。アンナと栗田が後ろ手で椅子に縛られた暗い倉庫にある人物がやってきて…という展開で、「まずオープニングで“アレ?知ってる『ネメシス』じゃないぞ?”と思わせる先制パンチを打った」と、入江監督は語る。そう言う通り、シリアスムードが立ちこめ、夢か現実かわからない場面は、どこかポップないわゆる「ネメシスさ」とはほど遠く、取材しながら面食らった。
ドラマのノリとは違う部分も多いが、もちろんドラマからのファンも裏切らない作りになっている。タカ(勝地涼)やユージ(中村蒼)、リュウ(加藤諒)まで、おなじみのキャラもほぼ全員登場するし、アンナと戦うことになってしまった朋美(橋本環奈)も再び登場する。ドラマを観ていたからこそ「あー、そういう事ね」となる仕掛けもある。逆に、ドラマを観ていない層も置いてけぼりにしない、どちらの観客もそれぞれの立場で楽しめる作品となっている。「別物なんだけど、やっぱりこれは『ネメシス』」―これまでにあった材料の何をどう構築したらそう思わせられるかに、非常に苦心したそうだ。
映画版の注目ポイントは?
今回の作品の見どころポイントは、まずはアクション。アンナを演じる広瀬のアクションスキルはレベルアップし、ほぼスタント無しでこなしたそう。魔裟斗との激しいバトルシーンは見ごたえアリアリ。また、「普通の場所で戦ってきたドラマ版とは違って、今回はもうちょっとメタバース感というかSF的な、新しい見え方のアクション」(入江監督)にも注目。そして、道路を完全封鎖して行われた大規模なカーチェイスも、シネスコサイズの映画のスクリーンならではの大迫力でテンションが上がる事間違いなしだ。
そして、アンナの成長にも注目。映画はドラマから2年後の設定で、ドラマの時は日本に来たばかりだった彼女は、2年間の日本暮らしで自立し始める。「生まれてきて良かったんだろうか」という悩みも消化し力強く生きている。自立心の芽生えによって、これまで依存していた風真や栗田と少し距離感が生まれた彼女に、「親離れ」を感じて少し寂しい2人…。そんな3人の関係性の変化も見どころの1つ。
個性的な新キャラ登場もポイント。特に、「窓」という役で登場する佐藤浩市に注目。佐藤は広瀬と今回が初共演となる。北島Pが「今回の“窓”という特殊な役を、どなたが演じたら一番映画的に見えるか、と考えたら、佐藤浩市さんだった」と、佐藤にラブコール。佐藤は、元々入江監督のファンで、いつか一緒にやってみたいと思っていたのと、難解な脚本を「コレ映画になるの!?でも映画になったらスゴいね」と面白がり、オファーを快諾。「オレ、この役どう演じればいいの!?」と、楽しんで演じたようだ。「皆さん観たら、浩市さんのお芝居にビックリしますよ(笑)」と北島Pが言う「窓」の出演シーンをお楽しみに。
「かなり実験的な映画だと思うので、“ドラマの映画化か”“ドラマ観てなかったから”と敬遠しないで、是非映画館に観に来てほしいです。佐藤浩市さんをはじめ適材適所で面白いキャスティングや見たことのない櫻井さんが見られたりしますし、最後まで面白くてワクワクすると思います」と、北島Pは満足できる99分間の映画体験を約束した。
「映画 ネメシス 黄金螺旋の謎」は、2023年3月31日(金)に全国公開される。
◆取材・文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部