松山ケンイチが見せた切なくて温かい名演技
なんという複雑な恋だろう。譲の思いを聞いた直木の心情も察するに余りある。現に“消える”と言っているものの、本当は怖くて仕方がない直木。それで悠依の人生を巻き込むのはありえないが、だからといって他の誰かと恋することは「死んでも嫌だし、そんなこと言ってる俺も嫌だし」と葛藤する気持ちを涙ながらに明かした。
そうはあっても「悠依にはただ笑ってて欲しい。それだけ」と結んだ直木の言葉を聞いた譲は、「もしも、どうしても悠依さんに何か伝えたいことがあったら、僕の身体、使って。見てるのは僕の目だし、聞こえてるのは僕の声だから非常に申し訳ないけど…直接悠依さんと話したいこといっぱいあるだろうし、その時はもう遠慮せず、僕の身体、使ってくださ~い!」と大泣きしながら告げた。
このシーンに対してSNSには、「直木と譲のシーン、胸がぎゅーんとなった」「魚住さんってピュア」「もらい泣きした」といった投稿が続々と寄せられた。
譲を演じる松山は、大河ドラマ「平清盛」(2012年、NHK総合)を始め主演作も多いが、脇を支える役柄でも存在感を放つ。今回のコミカルさが加わった役は、生来の素朴な雰囲気も相まってか、物語に温かさを与える。それと同時に、直木が憑依するときの、直木に思える姿はさすがの演技力だ。
今回もタイトルを略した「#金ドラ100よか」がTwitterのトレンドTOP10入りするなか、「魚住さん」も圏内入り間近という反響を呼んだ。
ただ、そこには心配の声も。たびたび体調不良の描写があったが、ラストで胸や頭を押さえて倒れ込んでしまったのだ。先祖の文献を調べていた叶恵によれば、霊に乗り移られることがある場合「すみやかに霊から離れなければ、命を削られ、やがて命を落とす」とのこと。
前回初登場したお菓子教室を営む千代(神野三鈴)が「ちーちゃん」と呼ばれ、莉桜(香里奈)ともつながりがあったこと、その教室にも出入りする希也(永島敬三)が涼香(近藤千尋)の殺害犯の可能性があることが明らかになり、また、菊地凛子演じる新たな幽霊も登場。ミステリーが色濃くなって考察が進みながら、悠依、直木、譲の恋からも目が離せない展開となっている。
◆文=ザテレビジョンドラマ部