俳優の黒木華が、4月5日に都内で開催された映画「せかいのおきく」の完成披露試写会に着物姿で登壇。共演の寛一郎、池松壮亮、佐藤浩市、そして原田満生プロデューサー、メガホンをとった阪本順治監督と舞台あいさつを行い、作品の印象や100年後の演劇界への思いなどを語った。
阪本監督のオリジナル脚本による時代劇
同作は、これまで長きにわたり日本映画界を牽引してきた阪本監督の30作目の監督作品で、初のオリジナル脚本による時代劇。社会の底辺を生き抜く庶民に目を向け、苦難に直面しながらもたくましく、したたかな彼らの姿を通し、“人と人の温もり”と“命の巡り”を映し出す。黒木は寺子屋で読み書きを教える主人公・松村きく(通称・おきく)役。ある悲惨な出来事に巻き込まれて声を失ってしまうという役どころだ。
海外からも「今までの時代劇にはない全てがある」と称賛されている本作。主演の黒木は、最初に抱いた作品の印象を「すごくロマンチックな話だなと。青春ものですし、どういう作品になるのかが楽しみでした」と明かす。
このほど完成を迎え、自身にとってどんな作品になったかを聞かれると「江戸時代には手話がないのですが、(おきくは)しゃべれないということだったので、それは初めての経験でした。どういうふうにすればこの気持ちを伝えられるだろう、ということをすごく考えた作品だったので、自分の中では新しかった。時代劇だけど、挑戦したことのない役でした」と振り返った。
「100年後に残したいものは『映画 舞台』」
映画のテーマに絡めて「100年後に残したいもの」についてのフリップトークでは、黒木は「映画」「舞台」と発表し、「残っているとは思うんですけど…たぶん。でも、最近は舞台でもロボットがお芝居をしていたりとか、AIで作っている映画もあるみたいで、やっている身としては100年後も残っていたらうれしいなと思います」と理由を説明。
続けて「舞台は本当に舞台が好きな方とか、見に来てくれる人が限られているんですよ。映画だとさくっと見られる値段ですが、舞台はそうもいかなくて。劇場も少なくなっていたりしているので、なくなると寂しいなと思いまして。残っていてほしいなと思います」と未来を憂いつつ、「100年後は私生きていないと思うので、どうでもいいっちゃどうでもいいんですけど…」と“元も子もない”ことを付け加え、会場の笑いを誘っていた。
佐藤も黒木と似た答えで、「劇場」と発表。「どうしても役者に尋ねられるとこういうこと(自身と黒木のフリップを指して)になっちゃうんですね。当たり前のように隣の人と一緒に劇場、小屋で物を見るということは100年後にはなくなっているんじゃないのかなと。ほぼ個人で配信されたものを自宅の壁か何かで見るのが当たり前になってしまって、『人と一緒に並んで見るんですか?そんな時代があったんですね』っていうことになっちゃうんじゃないかな、という一抹の寂しさを感じながら…そう思いました」と、しみじみと話した。
ほか、寛一郎は「DNA」と、池松は「平和」とそれぞれ発表した。
映画「せかいのおきく」は、4月28日(金)より全国GW公開。
◆取材・文・撮影=ブルータス・シーダ(STABLENT LLC)