俳優、声優、YouTuberとして幅広いフィールドで活躍しており、WEBザテレビジョンで「月刊染谷WEBマガジン」を連載中の染谷俊之。彼の最新主演映画「パラダイス/半島」(2023年7月21日<金>より全国ロードショー)の完成披露試写会が、3月25日に行われた。試写会後にインタビューを行い、撮影秘話や作品の見どころなどを聞きました。
オール伊豆半島ロケ。苦労したシーンを振り返る
──本日の完成試写会は三部にわたり、たくさんの染様ファンが来場しました。まずは試写会を終えた感想をお願いします。
あいにくの雨だったんですけど、本当にたくさんの方に見ていただいてとてもうれしかったです。舞台もそうですが、作品はお客さんに見ていただいて完成するものなので、ようやくやり遂げたという実感が湧いてきました。撮影はけっこう前だったので。
──撮影はいつだったんですか?
昨年の夏です。伊豆半島の伊東市(静岡県)で全編ロケを行いました。撮影場所(主人公が暮らす家)は山の上だったんですが、すぐ近くに海が見下ろせて、温泉もあって、すごく素敵なロケーションでした。トータル10日間くらい滞在して、すごく癒やされました。撮影に使った家は、実は監督(稲葉雄介)のご自宅なんです。なので劇中に出てくるコップやソファ、布団など、小道具もほとんどが監督の私物。監督は椅子の足に靴下を履かせるような神経質な面もあって、撮影中は“家を汚してほしくない”オーラが全開に出ていました(笑)。
──畑作業をするシーンがけっこうありました。
畑も監督の所有地です。撮影のときは、サツマイモなどを栽培していて、水をあげたり、雑草を抜いたり、実際に作業をしました。大変だったのが草刈り機を使うシーン。使い方が分からないまま渡されて、リハーサルで試してみたのですが、そうするとその部分だけ草がなくなってしまうので出来なくて。そんな状況のなか実際に本番でやってみたら、ウィーンって勢いよく動きだしてほんと焦りました。
──試写後の舞台挨拶には、共演の吉田美月喜さん、立川かしめさんも登壇されました。お2人とは撮影以来の再会でしたか?
昨年の12月に初号試写(関係者向けの試写会)があって、それ以来だから3カ月ぶりですね。吉田さんは「舞台挨拶は緊張する」とおっしゃっていたんですが、いざ登壇したら、楽しそうにたくさん喋ってくれて、「なんだ、全然話せるじゃん!」って安心しました。姪っ子の役なので、つい親戚のおじさん目線になっちゃいますね(笑)。かしめさんは年齢が近い(染谷の1歳下)ということもあり、話しやすくて今日も楽屋でとりとめのない話で盛り上がりました。本業は落語家さんで、演技は今回が初めてだったんですが、難しい役を自然に演じられてすごいなと思いました。
もし1年間休みを取るなら、どんな「パラダイス」で過ごす?
──染谷さんが演じた主人公・真英は、有名俳優という役どころでした。俳優を演じるにあたって、ご自身で心掛けた点はありますか?
売れっ子の俳優さんをイメージして役作りをしました。真英には大作の映画のオファーが来たり、劇中で出演しているCMが流れるシーンがあったり、あと、カットになっちゃったんですが、立ち寄ったガソリンスタンドの旗ののぼりに写真が使われていたり、そういうところを見ると、よっぽど僕より売れている俳優です(苦笑)。
──冒頭の動画配信シーンで、ファンのコメントを読み上げる真英は、ニコニコチャンネル「月刊染谷マガジン」(毎月1回配信)の染谷さんそのものでした(笑)。
あれは1年間休養していた真英がファンの方と久々に接するというシーンで、彼なりに「久しぶりだから、テンションを上げていこう」という思いがあったんです。それを表現したら、「染マガ」のときの僕みたいになっちゃいました(笑)。
──真英のキャラクターについて、稲葉監督からは何かリクエストはありましたか?
具体的な指示はなかったんですが、監督はこの作品に並々ならぬこだわりを持っていて、クランクインしたときに「なるべく表現しないで」と言われました。だからどのシーンも手応えがないんです、表現していないから。でも手応えのなさがこの作品では正解なんだと気付きました。ただ、あまりにも表現し過ぎないと、重要なシーンが風のように流されてしまうというか、重要な意味を持たなくなってしまうと思ったので、バランスを取ることは意識しました。僕自身が考えて強弱をつけた演技に対して、監督が「面白いね」と言って受け入れてくれる。そんなやりとりが多かったですね。
──真英のように1年間休養を取るとしたら、染谷さんならどう過ごしますか?
役者としてブランクをつくるのは不安でしょうがないので1年間も休みたくないです。でももし休むとしたら、自分のためになることがしたいので、語学留学がいいですかね。真英のような田舎暮らしや農作業には、あまり興味がないです。
──染谷さんにとっての「パラダイス」はどこですか?
この作品は伊豆半島が舞台ですが、僕自身は海が好きなので、やっぱり島をイメージします。島のリゾートで何もしないでのんびり過ごす。それが僕にとってのパラダイスです。そうだ、もし1年間休養を取るとしたら、バリ島とかに英会話留学するのがいいですね。
──では、最後に作品の見どころをお願いします。
本当に何も考えずに見ていただきたいです。「なんでこうなったの?」という説明っぽいことをあえて描いていないので、ストーリーに大きな波があるわけではないんですが、3人(染谷・吉田・立川)の心情を想像しながらぜひ見てください。そして、何もしないで3人で過ごすという時間が、彼らにとってのパラダイスなんですが、そういった時間の過ごし方も僕はすごく素敵だと思います。見てくださる方の中にも、自分と重なる部分があると思うので、何かを感じ取っていただけたらうれしいです。