2022年3月28日にアメリカ・ロサンゼルスで開催された「第94回アカデミー賞」で、国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督の映画「ドライブ・マイ・カー」。日本映画の受賞は「おくりびと」以来13年ぶり(当時)2回目の快挙となり、大きな話題となった作品のインターナショナル版が配信された。公開時、映画なのに“読了感がある”という感想が広まった。確かに、この作品を鑑賞することは限りなく“読書”に近い感覚に陥る理由を紹介していく。(以下、ネタバレを含みます)
濱口竜介監督がほれ込んだ村上春樹作品
「ドライブ・マイ・カー」の主な登場人物は4人。舞台俳優で演出家の家福(西島秀俊)、家福が移動する際のドライバーとして働く女性・みさき(三浦透子)、家福の妻・音(霧島れいか)と、音が家福に紹介する俳優・高槻(岡田将生)という関係性がつながっていく物語。家福が愛する妻を失い、その先も続いていく人生を、淡々と、かつショッキングなエピソードも交えながら描いていく。
原作は村上春樹が「女のいない男たち」と題して文藝春秋で連作した(2013年12月号~2014年3月号)短編小説の1作目。のちに、同作含む全6篇を収録した短編小説集「女のいない男たち」(文春文庫刊)として発売され、バラク・オバマ元米大統領が「2019年のお気に入りの本」に挙げたことでも話題となった作品である。カンヌ(「寝ても覚めても」コンペティション部門出品)、ベルリン(「偶然と想像」銀熊賞受賞)、ヴェネチア(共同脚本作「スパイの妻」銀獅子賞受賞)など世界三大映画祭を席巻した濱口監督が、原作にほれ込み映画化を熱望、自ら脚本を手掛けた長編作だ。
静かで、文学的かつ官能的
世界的評価の高い小説家の作品が原作だから、“読書”のようなのかといえばそれだけではない。この映画は、まるで一人きりで部屋にこもり本を1ページずつめくって読んでいくような、静かで、文学的かつ官能的。途中、何度も「え…?」となるストーリー展開が巻き起こり、観終わるときっと、他の人に内容や感想を話したくなるだろう。感想は統一されず、見る人によってどのシーンが印象に残るか分かれるタイプの映画だ。179分もの上映時間を長いと感じたか、あっという間と思ったか、そんな会話も生まれそうである。
https://www.disneyplus.com/ja-jp/movies/drive-my-car-international-version/
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