今期注目を集めるアニメ「【推しの子】」(毎週水曜夜11:00-11:30ほか/TOKYO MXほか※ABEMAで地上波同時・単独最速配信、ディズニープラス・DMM TVほかで見放題配信)。赤坂アカと横槍メンゴが描くリアルな芸能界の舞台裏は話題を呼び、Twitterでも日本・世界トレンド1位を獲得するなど快進撃を続ける。今回、アニメ/映画ライターの岡本大介氏が、本作のヒットの理由を3つの視点から分析する。(以下、ネタバレを含みます)
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良作揃いの今期アニメのなか、覇権に向けて頭ひとつ抜け出した感のある「【推しの子】」。アニメファンはもちろんのこと、感度の高いエンタメウォッチャーのあいだで毎週のように話題に上がっている。では、なぜここまで人気が出たのだろうか? すでにさまざまなメディアで語られているところではあるが、ヒットの理由について改めて筆者なりに3つのポイントにまとめてみた。「『【推しの子】』ってなんでこんなに人気なの?」と聞かれたら、ドヤ顔でこう答えておけば間違いない…かもしれない。
異例の初回90分放送と最速1億再生の主題歌
最初に大きな話題となったのは、初回90分という異例の放送体制。初回60分での放送というのは過去にも例があるが、90分というのはおそらくは史上初の試みだろう。前知識無しでアニメに触れた人からすれば、最初は「アイドルアニメ」だと思っていたものがやがて「転生モノ」となり、さらには謎とサスペンスに満ちた「復讐劇」へと変貌を遂げていくという怒涛のジェットコースター的展開で、きっと心を奪われたに違いない。もしこのプロローグを通常の30分枠で放送するとなれば、3話もしくは4話を消費してしまうことになるわけで、そうなると作品の真骨頂やタイトルのもつ本当の意味にたどり着く前に離れてしまう視聴者もいただろう。そういう意味で、この90分放送は大英断だったと思う。
そしてもうひとつ、コアなアニメファンだけでなく一般層へと広くリーチするための起爆剤となったのは、主題歌を担当したYOASOBIと女王蜂の存在が大きい。どちらも作品の世界観に寄り添った書き下ろし楽曲で、多くの人が楽曲きっかけでアニメ視聴へと繋がった。なかでもYOASOBIのOPテーマ「アイドル」はオリコン史上最短で動画再生数1億回を突破。さらに「歌ってみた」や「踊ってみた」関連のショート動画も大流行するなど、まさにSNS時代ならではのビッグウェーブを生み出した。これら2つの仕掛けにより、最高のスタートダッシュを切れた大きな要因だろう。
動画工房の新たな挑戦 アニメオリジナルの神作画
原作の魅力のひとつに、横槍メンゴ氏が描く美麗なキャラクターたちが挙げられる。アニメではその雰囲気を壊すことなく忠実に再現しているが、原作の決めゴマやここぞというシーンでは、大胆なオリジナル作画を施すことで大きなインパクトを生み出している。第一話で言えば、アイが息を引き取るまでの一連のカットはそれまでと比べて明らかに線数が増え、さらにそれが光って強調されているし、アクアが復讐を決意するカットは筆で描いたかのようなおどろおどろしいタッチとなっている。
前者は原作絵の究極進化であり、後者は原作から逸脱した改変だが、そのどちらも見事にハマっている。「【推しの子】」はリアリティを重視した世界観だけに、こうしたファンタジックな映像手法は、ともすれば世界観を崩しかねないものだが、あえて徹底して振り切ることでその特殊さを際立たせ、逆に違和感を払拭している。
アニメ制作を担当する動画工房と言えば「ゆるゆり」に代表されるような、可愛いらしい少女たちがヌルヌルと動く日常系アニメを得意としており、原作を忠実に映像化するスタジオとして有名。それだけに本作で取り組んでいる特殊作画は新たな挑戦であり、この作品にかける本気度がヒシヒシと伝わってくる。こうした「一枚絵としてのインパクト」を追求した作画は第2話以降でもたびたび見られ、そのつど原作ファンやアニメファンに話題を提供している。
▼Disney+で「【推しの子】」を見る
https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/oshi-no-ko
▼DMM TVで「【推しの子】」を見る
https://tv.dmm.com/vod/detail/?season=exeegpzuvbsr474crvddwhfvt