社会派サスペンスの下に隠された王道バトル漫画のエッセンス
芸能界やSNS社会の闇があまりにリアルに描かれるため、ついつい社会派サスペンス的な見方をしてしまうが、私たちがカタルシスを感じる瞬間は、じつは意外にもバトル漫画に通じるところがある。
ドラマの撮影現場で、アクアが有馬かなのために段取り無視のスタンドプレーを見せる第4話。番組を制作する大人たちの思惑に反し、黒川あかねのために出演者の仲良し動画をネットにアップする第6話。あかねが役者としての才能を発揮する第7話などなど。これまでの最大瞬間風速は、何かと戦うときや能力覚醒の瞬間であり、これはかなりバトル漫画的な演出だ。
つまり本作は、復讐を誓うダークヒーローであるアクアが、さまざまな敵と戦っていくバトル作品とも受け取れる。原作担当の赤坂アカ氏のもうひとつの代表作「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」が、青春ラブコメの皮をかぶりつつもバトル要素を持ち合わせていたことを考えると、「【推しの子】」もまた、社会派の皮をかぶった王道バトル作品なのかもしれない。作品の根底にある「目の前の敵を倒す!」というシンプルさこそ、老若男女を問わず数多くの共感を呼んでいる理由なのではないだろうか。
現在第7話までが放送され、黒川あかねを主軸とした「恋愛リアリティショー編」もいよいよ佳境。こうなると次に気になるのは、ルビーと有馬かなが結成したアイドルユニット・B小町の今後だろう。アクアの復讐劇とあわせ、アニメでの描かれ方に注目したい。
◆文=岡本大介
▼Disney+で「【推しの子】」を見る
https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/oshi-no-ko
▼DMM TVで「【推しの子】」を見る
https://tv.dmm.com/vod/detail/?season=exeegpzuvbsr474crvddwhfvt