豊に勇樹は「ここだってお前の居場所なんだからな」と告げる
勇樹に自分が邪魔だと思っていたから家に近づかなかったのかと聞かれ、豊が小さくうなずくと勇樹は「ばか」と言う。豊が驚いて顔をあげると、勇樹は「あの頃は俺も子どもだったし、いつまでも家族じゃないみたいな顔してたのはお前のほうだろ。集まりぐらい顔出せよ、ここだってお前の居場所なんだからな」と諭す。
そこへ買い出しに出ていた父と母が帰ってくる。お茶をしながら一人暮らしの豊を心配する母に、残業が続いて寝込んだことを豊が話すと父も大丈夫かと心配。母は思い出し笑いをして、昔豊が熱を出したときに勇樹が一晩中見ててくれたことがあったと言う。豊が幼い頃に熱に浮かされているなか頭をなでてくれたのは勇樹だったことがわかり、豊は静かにほほ笑む。
実家からの帰り道、豊は身につけている穣がくれたマフラーに手をやり、穣の元へと走り出していく。豊が兄や家族と向き合うことができて、見ているほうも良かったと心から思えた。豊の背中を押してくれたのは穣であり、それを豊も感じているからこそ会いたい気持ちが募ったのだと伝わり、胸が温かくなるシーンだった。
◆構成・文=牧島史佳
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