五十嵐、三間の「若い友達」に会う
気まずさでいっぱいになりながら並んで座っていた時、三間は隣に犬が居ることに気付いた。すると、「さくらちゃん!」と声がした。声の主は蒼真だった。犬は瞬の愛犬・さくらで、瞬と蒼真、颯の3人で散歩に来ていたのだった。颯は、五十嵐を見てどこかで会った気がするのだが思い出せずにいた。五十嵐は先日、書店で颯が忘れた傘を手渡し、滑って転びそうになったのを助けてくれた人物だ。そして、彼が実は颯が大ファンで憧れている“五十嵐元晴先生”だということはまだ知らない。
瞬らは、大人の男が公園のベンチに二人きりで座っている状況に変な気を回して、早々にその場を離れることにした。彼らに会って、緊張が一気にほぐれた三間。そして、五十嵐は楽しそうな3人の後姿を見送りながら、三間に若い友達がいることが意外だった、と告げた。
三間は「3人と出会って、いつも新鮮で楽しくて“友人”の意味に気付かされた」と話し始めた。それを聞いた五十嵐は「自分も昔、とある友人との出会いがきっかけで、小説家として大切なことを学んだ」と語った。その“友人”は、もちろん三間のことだ。
五十嵐は「人との出会いだけでなく、本や映画や音楽との出会いも自分を変えてくれるきっかけになる」と話し、「そんな作品と人をつなぐきっかけを作る三間さんの仕事はすてきだと思う」と彼に告げた。
五十嵐に褒められることばかり考えていた三間…
五十嵐のその言葉を聞いた三間は、彼に褒めてもらうことばかり考えて、これから作品に出会う人々に目を向けられていなかったことに気付くのだった。そして、颯らを眺めながら、原作の大ファンの颯が見てもイメージが崩れないように、本を読まなさそうな瞬が映画には興味を持ってくれるように、そして、蒼真が足を止めてくれそうなクリエーティブで遊び心のあるプロモーションを考えよう、と、アイデアが少しずつ形になり始めた。
一方、その時3人はさくらの糞を片づけていた颯が「すごく堅いけど、大丈夫かな…」と、心配そうに瞬らに見せ、蒼真が「本当だ。石みたいだ」と驚いていた。そして、その糞を掴んだ瞬は…「コレ、石だろ」と冷静にツッコんだ。蒼真はウケまくり、颯は痛恨のドジを悔やみまくった。
三間の唐突なタメ口に、五十嵐動揺
そんな彼らを見て、三間は珍しく大笑い。そして、五十嵐に「ありがとう、元晴!今日は会えて良かったよ」と、いきなり「元晴」呼びな上にタメ口で話し掛けてきた。唐突な距離の縮め方に「えっ!?えっ!?」と動揺する五十嵐におかまいなしに、三間は「また連絡するよ。次は、小学校時代の友人として」と告げて会社に戻っていった。
思わぬ急展開に「三間さん!」と、彼の背中に向かって叫んだ五十嵐。だが、すぐに「貴之…」と言い直した。ちゃんと覚えててくれた。五十嵐は喜びをかみ締めた。“貴之と元晴”の時間が、やっと動き始めた。
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部
avex trax
発売日: 2022/09/27
LAPONE ENTERTAINMENT
発売日: 2023/04/05