出演者3人にとっての「パラダイス」とは
──それぞれ印象に残っているシーンはありますか?
吉田:海岸で夕起(吉田)と竜(かしめ)が2人だけで話すシーン。かしめさんから出ている柔らかな雰囲気でないと、ああいった演技にはならなかったと思うので、注目して見てほしいです。そのシーンで竜が吸い終わったタバコにもう一度火をつけて吸うんです。そのことを「シケモク」っていうのを知らなくて、かしめさんに教えてもらいました(笑)。
かしめ:美月喜ちゃんに覚えなくてもいい知識を教えちゃった。もう一生使わないと思うよ(笑)。
染谷:僕が印象に残っているのは、真英(染谷)の暮らす家に、竜と夕起が転がり込んでくるんですけど、リビングでたわいもないことを3人で語り合うシーンですかね。競輪の車券が当たったらどうするか話したり、麦茶を飲んだり、タバコを吸ってくつろいだり。そういう何気ない日常のシーンが楽しかったです。
かしめ:僕は、染谷さんが海沿いに停めた軽トラの中にいて、競輪の車券が当たっているかチェックするシーン。染谷さんと軽トラ、そしてちょっと夕日がかった景色のギャップがすごい異世界観を醸し出していて、かっこよかった。でもやっぱり、染谷さんと軽トラは似合っていない(笑)。
染谷:あのシーンは最後の撮影で、かしめさん自身はすでにクランクアップしていたので、わざわざ現場に残ってくれていた。
稲葉:僕が寂しいから、「帰らないで残っていて」って言ったんです(笑)。
かしめ:いや、単純にオールアップがどんな雰囲気なのかを見たかったからです。
──稲葉監督は今作品で伊豆半島を「パラダイス」として捉えましたが、出演者のみなさんにとっての「パラダイス」はどこですか?
染谷:難しい質問ですね(としばし考える)。僕自身も海が好きなので、やっぱり島を想像します。南国のリゾートアイランドで何もしないでのんびりと過ごす。それが僕にとってのパラダイスですかね。
かしめ:僕は温泉というか、湯船全般。温かい水があるところです。30歳を超えてから、体を温めたほうが健康になれるということを身に染みて感じるようになりました。
吉田:私はO型だからというのもあるんですけど、どこにでも順応できて、そこをパラダイスにすることができる気がしています。
染谷:それはすごい! いい人生を送っているね(笑)。
吉田:なので他の人から「私の趣味に付き合って」と言われても全然苦じゃないです。逆に私も一緒になって全力で楽しめちゃうタイプなんですけど、強いて言うならば家のお風呂。実は家に自分の部屋がなくて、一人になれるのはトイレかお風呂だけなんです。なので必然的に長湯して、お風呂の中で動画を見たり、歌ったりしています。その時間が一番リラックスできていますね。
取材・文=河合哲治郎