アニメ「呪術廻戦 懐玉・玉折」(毎週木曜夜11:56-0:26ほか、TBS系、ABEMA・ディズニープラスほかにて配信)の第5話「玉折」が8月3日に放送された。第2期前半「懐玉・玉折」編は全5話で描く、劇場版「呪術廻戦0」へとつながる前日譚。五条悟(CV.中村悠一)と夏油傑(CV.櫻井孝宏)のまぶしいアオハルから始まったエピソードだが、その先の未来に2人のアオがないことは劇場版で描かれている通り。最終回の今話、改めてそこに行きつく過程が描かれたことで、夏油傑という悲しい呪術師の姿が浮き彫りにされた。
シャワーの音が“あの拍手”の音に
天内理子の護衛任務失敗から1年後。「私たちは最強なんだ」と肩を並べていたはずの親友は、誰も比肩し得ない最強の存在になっていた。無下限呪術を完全にものにし、手に入れた力を楽しむような五条に対し、クマができたやつれ気味の夏油。冒頭から対照的な2人の姿が描かれ、あれからの1年、夏油がどれほど苦悩する毎日を過ごしてきたのかが伝わってくる。何より夏油の苦悩は、親友に置いて行かれただけでなく、貫いてきた信念が揺らいだことも大きかった。
高専の任務に逆らってまで救おうとした天内の死は夏油の心に深い傷を残し、それを象徴していたのが薄暗いシャワールームのシーンだ。「ブレるな。術師としての責任を果たせ」と言い聞かせながらも、記憶によみがえってくるのは1年前の出来事。次第に夏油の顔から表情が消え、極めつけは耳に入るシャワーの音が、あのとき聴いた盤星教信者たちが鳴らす拍手の音へと変わっていくことだった。
このシーンには視聴者の反応も大きく、Twitter(現X)には「もうね…あの嫌な拍手の音が耳から離れない。なんて演出してくれんの…」「潰れていく夏油が切なすぎる」「視聴者の心を目と音で抉っていくスタイル」などのコメントが次々に上がっていた。
親友との別離が告げたアオハルの終わり
灰原雄の死、九十九由基との会話が呼び水になっていたところに、集落で目撃した呪術師への不条理。夏油がなんとか保っていた呪術師としての信念はついに折れ、集落の全ての“猿”たちを呪殺してしまう。高専に届けられた調査報告書には夏油が処刑対象となったことが記載され、担任の夜蛾から五条も事件を知ることになる。
「運試し」とうそぶき、新宿に舞い戻ってきていた夏油と再会する五条。問い詰め、彼らしくもなく感情的になる五条に対して、親友との決別のためか、夏油は寂しさをとどめる顔で対峙する。これからの生き方を告げる夏油に、それを否定する五条。しかし、「殺したければ殺せ。それには意味がある」と背中を向ける夏油を、五条は結局見送ることしかできなかった。
この別離のシーンでは「君にならできるだろ?悟」と返した夏油の言葉が特に印象的だった。同じ特級だとしても、五条とはもう埋められない差があることを暗に認めている夏油。五条にとってもこれは抉られる言葉にもなったはずだ。五条はきっと、強くなれば人を救えると思っていたのだろう。しかし、夏油の葛藤に気づくことができず、呪詛師に堕ちる彼を救うことはできなかった。解釈は様々であるが、夏油は救う側に立っていた人間で、これが「俺が救えるのは他人に救われる準備があるやつだけだ」という、後の五条の言葉につながっているのだと思うところだ。
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