映画「福田村事件」の初日舞台あいさつが9月1日、都内にて開催。俳優の井浦新、田中麗奈、永山瑛太、東出昌大、向里祐香、杉田雷麟、水道橋博士、豊原功補、カトウシンスケ、木竜麻生、森達也監督が登壇し、同映画に対する想いを語った。
満席の劇場に「ぐっときています」
同映画の題材は、1923年9月1日に発生した関東大震災から5日後に、千葉県福田村で起きた「福田村事件」。千葉県東葛西郡福田村に住む自警団を含む100人以上の村人たちにより、利根川沿いで香川から訪れた薬売りの行商団15人のうち、幼児や妊婦を含む9人が殺されたのだ。関東大震災から100年となる23年に、実話を元に映画化を果たした。主演は、夫婦役を演じた井浦と田中が務めた。
満席の劇場を見た井浦は「この光景にぐっときています。各映画館でいろいろな映画が公開されている中、こんなにもたくさんのお客様本当にありがとうございます」と感謝。続けて、同映画に参加した経緯を「僕は19年10月17日、テアトル新宿で、森監督とプロデューサーに会った時に、森監督が福田村事件を映画化するという話を初めて聞きました。『君にも参加してほしい』とオファーをいただき、僕はその場で『どんなことがあっても参加したいです』と森監督に伝えました。森監督のドキュメンタル作品は見てきていましたが、劇映画で森監督がどのように現場の中心に立って、どう映画作りをされるのか。それを最前線で何がなんでもみたいという想いがありました」と話した。
映画人としての使命語る
薬売りの行商団を率いる沼部新助を演じた永山は「この映画の企画と、準備稿をいただいて、内容を知った時に、まず『僕の出番を増やしてくれ』と初めて言いました。少しだけ増えました」と打ち明け、同映画に参加できた心境を「すばらしい映画ができあがりました。日本映画に一石を投じる作品に携われて僕は幸せです」と吐露した。
無精髭をたくわえて登場した東出は、同映画への想いを「この企画の話をいただいた時に、プロデューサーの荒井晴彦さんが『ハリウッドだったら3、4回はリメイクされていてもおかしくない題材なのに、日本人は取り扱ってこない。なかなか作れない』とおっしゃっていました。日本の大手の配給会社、テレビ局が出資するところで、このような差別や国の問題、同調圧力は描き切れないのかもしれないんですけど、楽しいエンターテインメントだけではなく、負の遺産と言いますか。『なぜ起きてしまったんだろう』ってことを考え続けながら、物語として紡いでいくのも、映画人としての大事な仕事だと思いますので、今後もそういう仕事に携われればと思います」と述べていた。
◆取材・文=大野代樹