極限に追い詰められた人間の本性を描きだした問題作、「なれの果ての僕ら」(毎週火曜深夜0:30-1:00ほか、テレビ東京系ほか)。最終話となる第12話が9月12日に放送され、「まさかこんなに泣くとは…」「最後の最後までジェットコースターみたいだった」といった声が集まっている。“最高の6年2組”が迎えた実験の終焉(しゅうえん)は、またしても誰かの血に塗れたものだった。(以下、作品のネタバレが含まれます)
「なれの果ての僕ら」とは
同ドラマは、「週刊少年マガジン」および「マガジンポケット」で連載・配信された内海八重の漫画が原作。同窓会に集められたクラスメート23人を襲うのは、誰も予想だにしていない監禁劇だった。極限状態に追い詰められたときに暴かれる、人間の“狂気”を克明に描いた衝撃のサスペンス作品だ。
主人公のネズ(真田透)を演じるのは、NHKドラマ「麒麟がくる」などに出演したHiHi Jets・井上瑞稀。さらに監禁事件の首謀者であり、“人間の善性”への興味から残虐な実験始めた夢崎みきおという難しい役柄を、実力派俳優・犬飼貴丈が演じる。
復讐を果たすべき相手
教室への乱入時に、すかさず腹部を狙い打たれた夢崎亜夜子(雛形あきこ)。ネズはみきおとのやり取りによって、あらかじめ亜夜子が最後には教室にやってくるだろうことを知っていたのだ。
時間はみきおが殺害される直前、最後にネズと語り合ったシーンにさかのぼる。「君なら解けると思ってたのになあ。過去の呪縛…」とネズを真っすぐ見つめながらぼやくみきお。しかし続けて、「1つ、僕の想像を遥かに超えたネズに良いことを教えてあげる」「絶対に母さんがやってくる」とアドバイスを預けた。
倒れた亜夜子が持ち込んだ銃を足で蹴り飛ばし、「僕の実験は僕だけのものだ。たとえ母さんでも、身勝手なことは許さない」というみきおの言葉を伝えるネズ。腹部を真っ赤に染めて息も絶え絶えの亜夜子だが、その伝言には「うれしいわ…母親として」と狂気の笑みを浮かべる。
ネズはさらに、みきおから得たもう1つの秘密を語った。それはみきおのノートパソコンに格納されていた動画データ。内容はネズに向けてのメッセージで、“幼少期に植え付けられた感情について”というものだ。
「僕は小学生のとき、この実験のタネをまいた」みきおが語る内容は、実験の準備と狙いに関する話だった。親の期待を一身に背負っていた橘公平(ゆうたろう)に雨宮鈴子(大原優乃)ならなんでも言うことを聞くと伝えたり、及川龍雄(草野大成)にあえてそっけない態度を取って劣等感を植え付けたり…。たしかに今回の実験で告発され、あるいは騒動の引き金に至る感情の根っこといえる。
こうしたタネをまいたうえで極限状態に追い込み、どこまで“善性”という仮面をかぶっていられるのか…というのが今回の実験のあらましだったようだ。結果、亜夜子がみきおにかつて語った“極限状態で善性を保てる人間は少ない”という言葉が立証された形に。しかし、それぞれの本性が露呈したあと、みきおの想像を超えることが起きていた。
過去の過ちを認めて心から謝罪する者、弱さを克服して意思を強く保つようになった者…クラスメートたちの姿を見て、みきおは「不思議だったなあ、君たちは」「僕はいつの間にか、君たちから教えられてた」と言葉を連ねる。「僕は…いや母さんか。とにかく、間違いは正さないといけない。僕も、君たちみたいにあらがってみようと思う」と、自身も幼少期に亜夜子から植え付けられた呪縛に立ち向かう意思を見せるみきお。
ビデオの最後は、「ネズ…いつかまた会えたら」という言葉とかすかなほほ笑みだった。