コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は『塩坊主に惚れたキツネ』をピックアップ。
坊主にベタ惚れのキツネを究極の塩対応でいなしていく痛快なラブコメを描いた本作。作者の伽奈茶井子さんが2023年7月12日に自身のX(旧Twitter)に投稿したところ、11.8万を超える「いいね」が寄せられ大きな反響を呼んだ。この記事では、伽奈茶井子さんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについて語ってもらった。
坊主に惚れたが運の尽き…塩対応にもめげずアタックするキツネがかわいすぎる
ある日、坊主の前に美女が現れた。どうやらその正体は昔、坊主に命を救ってもらって惚れてしまったキツネらしい。「もうっだからっ 抱いてって! 言ってるじゃないか!」とアタックするも、正体に気付いている坊主は「断る」の1点張りで塩対応を貫く。
その美しい化け具合にキツネがかわいそうと言う周りの者もいたが、「抱くわけなかろう畜生など」とひどい言い方は変わらない。あまりにも塩対応な坊主を見かねてキツネは、男になってみたりアイドル町娘になってみたりと様々な人間に化けるが、その甲斐もむなしく散ってしまうのだった。
坊主にベタ惚れのキツネの想いはいつか坊主に届くのか…。
いろんな人間に化け、あの手この手で坊主をオトそうとするキツネの健気さが話題を集めた本作。X(旧Twitter)上では「笑顔で断るのがいいわ~」「がんばれキツネ」「キツネ、かわいすぎる」「怒涛のテンポ感が良い」「声出して笑っちゃった」「なかなか修羅の道…」などのコメントが寄せられ、大きな反響を呼んでいる。
「言葉にするのは恥ずかしいけど漫画でなら言いたいことが言える」作者・伽奈茶井子へのインタビュー
――『塩坊主に惚れたキツネ』を創作したきっかけや理由についてお聞かせください。
商業での漫画のお話を頂いてから1年間くらいネーム作りに悩んでいて、「もうだめだ、商業用のお話が何も思いつかない!自分の好き勝手に描いたものをSNSに載せよう!」と何も考えずに勢いで描いた数作の内のひとつが『塩坊主』でした。4P完結のお話です。
お話の展開を考えるにあたり、その1年間で読んだ物語作成のためのハウツー本や、見た映画の構成などに影響を受けたかとは思うのですが、最初の4Pを描いた時の記憶はあまり残っていません(笑)。和尚というキャラクターで何か描きたい、ということは決まっていたので、それに合わせてキツネや起承転結は決まったのだと思います。最初に載せた作品の反響が想像以上でしたので、ならば続きを描こうと筆に任せて描きました。
――坊主にベタ惚れの美女キツネとキツネに全く興味がない塩対応の坊主、それぞれのキャラクターはどのようにして生まれたのでしょうか。
元々、和尚は別のお話のキャラクターとして考えていました。まとまって完成した作品があるわけではないのですが、自分が学生の頃から考え親しんでいるキャラクターなので、セリフや行動を考える時は自然にスラスラと出ます。彼がもしキツネに惚れられたらこういう態度を取るだろうな、という態度が塩対応です。
人間と獣という目線で見るので美醜で態度を変化させることはありません。彼は性格に難ありですので、キツネだけでなく他の人にも塩対応ですが。そんな和尚に負けないくらい自我が強い子がいいなぁと、キツネの性格は決まりました。塩対応されて泣いてばかりの子ではかわいそうです。厄介な性格の和尚に「油断できないな」と思われるくらい厄介な子であれと思いました。
――本作の中で伽奈茶井子さんにとって特に思い入れの強いお話があれば、理由とともにお聞かせください。
ひとつは「キツネは」というタイトルのお話で、キツネが自分の一生は短いので好きな人と寝たい、ということを語る回です。影響を受けた作家の小説や、大好きな歌の歌詞にこういった刹那的発想の女性が出てくるのですが、キツネにはそういう風に一瞬に輝いて生きてほしいと思いました。きちんと表現できたかな、と思えるお気に入りの回です。
もうひとつは「キツネの願い」という回で、キツネが「自分が人間になるのではなく和尚をキツネにしたい!」と告げる回です。キツネも和尚もだいぶ利己的なキャラクターですので、その後は泥仕合の展開になります。力のある者同士、我の強い者同士の泥仕合は悲観的にならず、滑稽さもあり大好きです。楽しく描いた回でしたので、読者の皆さんの反応が多かったことも嬉しかったです
――普段から様々なラブコメを描かれていますが、物語を創り上げるうえでどのようなところから着想を得ているのでしょうか。
「こういうお話やキャラクターが好き」「こういった考えの人もいるよね」「こういう見方もあるよね」を伝える一番のコミュニケーション手段が私にとって漫画でした。私は人と話すこともとても好きですが、言葉にするのは恥ずかしいけど漫画でなら言いたいことが言えます。
アイデアも大袈裟なものではなくて、「そういえば最近こういう小説を読んだのだけど、この人物が良かったよ」と友人に話すくらい簡単なものを漫画にしているのだと思います。
――伽奈茶井子さんの今後の展望や目標についてお聞かせください。
今年は、幼い頃から憧れていた漫画家という職業に大きく一歩近づけた一年でした。『塩坊主』はSNSで描いたものをまとめて単行本にして頂いたので、本当に伸び伸びと描きましたし、担当さんもそれを許して下さいました。これから先、漫画家として描いていこうと思えば、自分が表現したいことの他にも目を向けて取り組んでいかないといけません。まずは商業として連載できる作品を描き、うまく自分の表現の幅を広げていけたら良いなぁと思います。アニメ化やドラマ化のお話がもらえるような作品を描けたらとても嬉しいですね。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方々へ、メッセージをお願いします。
私の描く漫画を読んで下さっている皆さま、いつも本当にありがとうございます。自分自身が楽しく描いている作品に対し、読んでいて楽しかったと思って頂けているのであれば、それはとても幸せなことだと思います。これからもたくさんの漫画を描いていこうと思いますので、ゆるりと見守って頂ければ幸いです。