青沼の言葉で黒木の感情が爆発
第13回では、人痘接種により死者を出してしまったことや大奥の風紀を乱した責任を問われ、青沼は「死罪」を、黒木らは「大奥追放」を言い渡されてしまう。
伊兵衛(岡本圭人)は、青沼の「死罪」に納得がいかず止めようとするが、そんな伊兵衛を黒木が止める。誰よりも青沼のそばにいて、青沼のよき理解者だった黒木は、青沼がすでに「死罪」を受け入れていたことを理解していたのだろう。
黒木は、ぐっと涙をこらえていたが、青沼の「いつか必ず人痘が求められる時が来ます。その時は皆さんお願いします。皆さんが居なければとてもここまで来られなかった」という言葉で抑えていた感情が爆発することに。
黒木は、誰よりも早く駆け出し「ありがとうございました。先生に出会わなければ、虚しき日々を過ごしていたことにございましょう。誠にありがとうございました」と自身の運命を変えてくれた青沼に力の限り、感謝の言葉を投げ掛けた。このシーンで、黒木にとって青沼がどれほど大事な存在だったかが、明らかになった。
最初で最後の「うそ」
青沼の死後、大奥から出た黒木は梅毒に侵されている源内の元を訪れる。源内は、弱々しくもうれしそうな声で、黒木が自分の元に来た理由について、「人痘が大成功を収めたから」と元気な時をほうふつとさせるような推理を披露。
その姿を見た黒木は、青沼が「死罪」を言い渡された時と同様にぐっとこらえ、青沼が元気か問う源内に「お元気ですよ。源内殿のおっしゃる通り、人痘は大成功し、大奥の講義はますます盛況。青沼さまは多くの弟子を抱え、大奥の蘭方医、女の蘭学者が生まれております」と現実とは異なる、源内や黒木自身が望んでいた話をする。
源内は視力をなくしており、うそをついても源内には見抜くことができないと判断した黒木は、声を震わせないようにしながら、精いっぱいの笑みを浮かべ、源内のために優しいうそをついた。
黒木にとって、大事な人であり、うそをつきたくない一人でもある源内が“黒木がうそをつく最初で最後の人物”となるのだと気付いた瞬間、黒木が源内を思う気持ちや源内のための優しすぎるうそに涙腺が崩壊した。
黒木が雨の中で泣き叫ぶ
青沼、源内と立て続けに大事な人を失った黒木は、雨の中、江戸城に向かっていた。黒木は、江戸城に向かって「女たちよ、江戸城にいる女たちよ。貴様らは母になったことがないのか、男子を生んだことがないのか。生んだならばその子を赤面で亡くしたことはないのか。そういう悲しい母と子を一人でも減らすために懸命に歩んできた者にこの仕打ちか。あまりにも理不尽ではないか」と泣き叫んだ。
怒りをあらわにする黒木の思いをあざ笑うかのように、雨は激しく降り注ぐ。今は絶望の中にいる黒木だが、きっと黒木の中には「赤面撲滅」を諦める選択はないと思われる。
青沼と源内、そして意次にもらったバトンを無駄にしないために、再び立ち上がるであろう黒木の活躍を期待したい。
◆文=ザテレビジョンドラマ部