コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回はイラストレーターとして活動する甘夜にふるさんが描いた漫画『金糸の業』をピックアップ。
王の"家畜"として育てられた人外とお世話係の別れを免れない関係を緻密に描いた本作。作者の甘夜にふるさんが2023年10月6日に自身のX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、1.4万を超える「いいね」が寄せられ反響を呼んだ。この記事では甘夜にふるさんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについて語ってもらった。
王の"家畜"に情が湧いたお世話係の覚悟に感動
ある国の王は代々呪われており、「食物」を全く受け付けない身体になっている。そんな王の栄養として使われているのが変声期前の少年の歌声だ。そのため、この国では効率よく王が栄養を摂取できるよう鳥類と人間の遺伝子を掛け合わせた"金糸雀(カナリア)"と呼ばれる家畜を用意していた。
変声期を迎え美しい声が出なくなると処分されてしまう"金糸雀"、その健康管理や処分を任されているのがお世話係である。セドリックもそのお世話係の1人で、王の命に関わる名誉ある仕事として毎日の仕事を全うしていた。
ある日からセドリックは王のお気に入りの"金糸雀"・アルモニを世話することになる。「家畜に情は抱くな」と言われていたものの、セドリックは日々の世話により少しずつ情が湧いてきてしまうのだった。お世話を始めて1年数か月後、アルモニは「セドリック…声が…変なの…」と訴えかける。
処分が近づいていることを察したセドリックは、自分が処刑されることを覚悟しながらも「君を逃す」とアルモニを城から逃した。投獄されたセドリックにその後訪れたまさかの展開とは…。
王の家畜”金糸雀”とお世話係との深い信頼関係と壮大かつ繊細な世界観が話題を呼んだ本作。X(旧Twitter)上では「心がえぐれる」「あまりにも刺さる…」「世界観すごい」「かなり壮大なストーリーの予感...」「金糸雀美しいなあ」「すっごいきれいな絵だなぁ...」「続きが気になりすぎる」などのコメントが寄せられ、反響を呼んでいる。
キャラクターデザインはリアルになりすぎないよう"ポップな要素"を入れる 作者・甘夜にふるさんが語る創作の背景とこだわり
――『金糸の業』を創作したきっかけや理由についてお聞かせください。
元々「呪われた王族」や「音しか食べることができない病」などイラストにするには難しいテーマが自分の中で散在していました。どうにか形にしたいと思っていた時に、一次創作系の大学のサークルで創立45周年記念誌を作るという話があがり、それに寄稿するために漫画を描いてみようと思ったのがきっかけです。
――変声期前の少年の歌声を栄養とする王のために生み出された”金糸雀”のアルモニとお世話係のセドリック、それぞれのキャラクターや関係性はどのように生み出されたのでしょうか?
最初は呪いを受けている王に焦点を当てて話を描こうと思っていましたが、もう少し話に動きが欲しいと思いそこでセドリックというキャラクターが誕生しました。「飼育員と家畜、搾取する側とされる側の間に芽生えた愛情(もとい依存関係)」というテーマで描きたいと思いアルモニとの関係性ができあがっていきました。
――本作の中で甘夜にふるさんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフがあれば理由とともにお聞かせください。
冒頭でセドリックが金糸雀を処刑した後、髪をタオルで拭きながら笑顔で家族写真を見ているシーンがお気に入りです。この時点で彼は「金糸雀は家畜であり、お世話することは自分の家族を食わせていく手段でしかない」と完全に割り切っていて、その後彼の中で起きる変化を楽しんでいただけるかなと思い描きました。
――本作をX(旧Twitter)に投稿後、そのストーリーの壮大さに多くの読者から続編を求める声が多く寄せられています。続編を描く予定はあるのでしょうか?もしあれば、どのようなところに注目して読んでほしいかについてお聞かせください。
王様に焦点を当てた話やセドリックとアルモニのその後など、『金糸の業』と同じ世界観で様々な話を描いていきたいという気持ちがあります。今回はセドリック目線の話でしたが、続編は群像劇のように様々なキャラクター目線で描いていきたいです。様々なキャラの心情や生い立ちにぜひご注目いただきたいです。
――甘夜にふるさんは漫画創作以外にもイラストレーターとして繊細な感情を表現したキャラクターデザインを多く描かれていらっしゃいますが、作画の際に意識していることやこだわっていることがあればお聞かせください。
キャラクターデザインをする際はリアルになりすぎないよう「ポップな要素を入れる」ことにこだわっています。例をあげると、現実では再現しきれないような重力を無視した髪型などでしょうか(笑)。シルエットにした時にキャラクターを判別できるくらい色合いだけではなく形も意識して作画をしています。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方々へ、メッセージをお願いします。
『金糸の業』を読んでくださった方、普段から私の描くイラストを見てくださっている方、本当にいつもありがとうございます!皆さんの反応やコメントが日々の創作の活力になっています!今後も楽しく創作していこうと思いますので、よろしければ作品を見てやってください!よろしくお願いします!