コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、厘てくさんが描く『カメレオンはてのひらに恋をする。』をピックアップ。
2023年9月21日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、7.5万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、厘てくさんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
難聴の青年と売れない俳優が“伝えたい気持ち”を通わせていく…
大学生で俳優の藤永は、“「伝わること」はよろこびだ”と人一倍思っている。そして、演技においても全身で想いを届けていた。しかし、特に映画やドラマなどスクリーンで映る演技において、藤永の表現はかなり誇張されて映り、オーディションは振るわない結果ばかりだった。
そんな毎日に、藤永は“伝わらない悲しさともどかしさ”を募らせていた――。
ある日、電車の中である出会いが訪れる。隣に座っている人が居眠りで肩に頭をもたれかけてきた…という、毎日電車に乗る人なら一度は経験したことがあるような些細な出会いだ。しかし、後日、同じ大学の後輩だということを知る。
彼の名前はケイト。大学で偶然再会し、後輩という新鮮な存在だったこともあり、藤永はケイトを食事に誘った。会話を続ける中で、うまく意思疎通できていない瞬間があり、ケイトは外国人のような容姿だったため、最初、日本語が苦手なのかなと思っていた。しかし、どうやら違ったようだ。ケイトは先天性難聴で耳が聴こえないのだ。
藤永は驚いた。コミュニケーションに違和感はあったが、ぎこちないながらも会話は成り立っていた。耳が聴こえないのに、どうやって自分の会話が届いていたのだろう…。ケイトに尋ねてみると、口の動きを見て言葉を読む“口話(こうわ)”によって言葉を受け取っていたという。
それからも、藤永とケイトはコミュニケーションを重ねた。“「伝わること」はよろこびだ”と感じている藤永には、手話を含む身振り手振りで伝えようとするケイトの想いが伝わる瞬間も度々あった。
そうやって、二人が交流を深めていったある日、藤永はケイトから絵本を読み聴かせてほしいとお願いされる。“声を使わずに”という条件付きだ。一瞬驚いた藤永だったが、数々のオーディションで無茶ぶりをされてきた経験もあり、俳優の血が騒ぐ。
藤永は、指や腕を繊細に動かし、全身も大きく使いながら、物語を一生懸命ケイトに読み聴かせた。ケイトは大きく目を見開いてそれを見つめる。
途中で話を止めたケイトは、“もう十分だ”と伝えた。「フジナガの伝えたい気持ちが伝わった」と…。さらにケイトは続ける。
「フジナガがもってる表現力すばらしい」
「伝えたい気持ち 伝わるしあわせ知ってる」
この言葉は、藤永が何年も聴きたかった言葉だった。
本作は、手話をはじめ、目で聴く会話で想いを重ねていくハートフルラブストーリーだ。気持ちが伝わることの素晴らしさに改めて気づかされる作品となっているため、ぜひチェックしてみてほしい。
作者・厘てくさん「日本手話という視覚言語が大変奥深く、私には芸術的にも感じていた」
――『カメレオンはてのひらに恋をする。』を描こうと思ったきっかけや理由などをお教えください。
現在の担当さんに「ヒューマンドラマに重点を置いた恋愛漫画を描いてみませんか?」とお話をいただきました。
同じタイミングでろう者劇団の方とお会いする機会があり、私も漫画という視覚的なアプローチでなにかを伝えられないかな?と思ったのがきっかけです。
日本手話という視覚言語が大変奥深く、私には芸術的にも感じていたところが以前からありました。
――作品を描く上で、特に心がけているところ、大切にしていることなどをお教えください。
丁寧に描くことを心がけてます。
作画の面では、できるだけ瞳に感情を持たせたいな〜と意識はしています。
――今回紹介させていただいております第 1 話の中で、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
「伝えたい気持ち 伝わるしあわせ知ってる」の台詞です。
とても当たり前なことなのですが、お互いの共通点であり、お互いが一番求めているものなので。
――今作の投稿には、読者から多くの“いいね”やコメントが寄せられていました。今回の反響をどのように受け止めていらっしゃいますか。
うれしいです!本当にありがとうございます。
――今後の展望・目標をお教えください。
恋愛漫画なので、恋愛的な進展も描いていきたいです。
今まで以上に健康に楽しく描かせていただければ幸いです。
――最後に、読者やファンの方へメッセージをお願いします。
このたびは読んでいただいてありがとうございました。
コミックス購入してくださったり、ご感想いただけたり、感謝のきもちでいっぱいです。
引き続き、本作をよろしくお願いいたします。