コンプライアンス時代だからこそ…社会派コメディーをもう一度
――連ドラ執筆時にはゆとり世代にいろいろ取材を敢行されました。今回も取材をなさったとうかがいましたが、シナリオに反映されていますか?
前ほど取材は多くはないけど、中国人の方にも会いましたね。あとは前回会って、正和のモデルになった酒屋さんにもう1回会いました。でも具体的にエピソードをそのまま使うというよりは、会ったことで刺激されて、こうだったら面白いな…と考えていきました。でもそう言えば、その酒屋さんの社長は正和みたいにYouTubeやってたんですよね。やっぱそうだよね、今ならみんなやるよねって、そういう確認はしたかな。Z世代が出てきて、あのゆとりモンスターだった山岸(仲野太賀)がどちらかっていうと調整役になる展開とかは、実際に社会がそうなっているな、と感じたところから発想している感じです。
――フィクションであってもコンプライアンスがうるさい昨今、「社会派コメディー」は一番難しそうで、でもうまくいけば最高に楽しいジャンルですよね。
昔は邦画にも社会派とか、風刺喜劇っていうジャンルがあったと思うんです。山田太一さんのドラマでも、社会現象をそのまま描いていたりしたし。今は帰ってテレビつけて、頭使わずに見られるものがいいんだよ、なんて言われると、僕なんかあまり必要とされてないんじゃないかという気になりますよね。考えさせるものも、あってもいいんじゃないかなって思って書いたのが「ゆとり-」の始まりでした。そうしたら特に自分の身の回りで面白いって言ってくれる人が多くて、映画にもなった。でも昔はもっと多かったと思います。
――セリフにもコンプライアンスチェックが多く入ったとうかがっています。でも今回宮藤さんは、登場人物が問題発言をした直後に、隣の人物に「それ、問題発言」などと言わせて否定をさせる、という荒技を編み出したとか。
水田さんに言われて気づいたんですけど、確かにそうしているかも。セクハラとかパワハラみたいな会話って、本当はみんな言い合ってるのに、メディアにはあんまり出てこないところで、書いてみて分かったけどすごく面倒くさいし、難しいところではあるんですけどね。
――むしろそういう規制が多いほうが、反動で創作意欲が燃えるものなんでしょうか?
「この表現はちょっとマズいです」という意見って、クリエイティブじゃないですからね。そこ削ったら、面白くないじゃんって分かるはずなのに。「LGBTD」、山路の童貞をまりぶがからかうところなんて、僕は半分諦めてたけど、水田さんがすごく戦ってくれたんです。「これは“ゆとり”で散々やってきたことだし」って。童貞いじりをストレスに感じる人が多いのは肌で感じています。「笑えない」っていう意見も分かる。それで傷つく人がいるんじゃないかって思うと笑うに笑えない。僕だって、ハートフルで、誰も傷つかない系のやつを書けなくは……ないんですけれど、でも、みんなと同じもの書いてもしょうがないし。
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