おそらく台湾の全世代のクリエイターが日本の漫画の影響を受けている
ーー監督が手掛けた「あの頃、君を追いかけた」という作品が日本でリメイクされました。逆に、日本の作品が台湾でリメイクされることもありますし、日本と台湾は親和性が高いのでしょうか。
僕の世代は……いえ、台湾では全部の世代が、おそらく日本の漫画にすごく影響されていると思います。最近では「スラムダンク」の映画が台湾で大ヒットしました。僕が若い頃は、漫画なら「ドラゴンボール」、ドラマなら「東京ラブストーリー」がすごく流行っていたのを覚えています。
ーーどのような影響を受けられたのでしょうか。
映画のセリフ、ネーム、絵コンテは、今でも日本漫画スタイルでやっています。今、最新作として準備段階で、来月あたりから撮り始める作品があるのですが、その映画も日本の漫画っぽいネームや展開の仕方をしています。先ほど触れていただいた「あの頃、君を追いかけた」の撮影のミーティングの時に、参考としてよく話題になったのも日本映画の「いま、会いにゆきます」です。僕は台湾の大学で、脚本づくりの授業もやっていたのですが、純愛がテーマの時は本当にいつも日本の作品を例にして授業をやっていました。ですから、今の若い世代のみなさんが韓流ドラマを見ていることに対しては、結構ショックです。
ーー台湾でも、やはり韓流ドラマがよく見られているんですね。
今の若い人たちの間でもいまだ日本の漫画人気は健在ですが、多分みなさんドラマは韓流ドラマから入るという感じです。僕の世代は日本の作品からドラマや映画に入ったので、今の若い人たちがみんな韓流ドラマを見て、日本のドラマの良さ、作品の良さを知らないのはすごく残念だな、惜しいなと思います。
ーー今後、日本の映画界と何かコラボレーション、共同作業、共同制作のようなものをやられるお話やアイデアは、あったりするのでしょうか。
小さな夢がありますが、あまり言いたくないんです。インタビュー記事に載ることで、ほかの監督さんに目をつけられちゃったらどうしようと、今、すごく悩みました。実は、日本の「世にも奇妙な物語」がすごく好きで、いつかそのなかの1つのストーリーを撮りたいと思っています。ああ、言っちゃいました(笑)。ほかの、もっとすごい監督さんに知られて、取られてしまわないことを願います。
これが最後の映画作品だと思いながら撮った「赤い糸 輪廻のひみつ」
ーー監督の作品「赤い糸 輪廻のひみつ(原題:月老)」が、日本では12月に公開になる予定です。どのような思いを込めた作品ですか。
この作品の前に公開した「怪怪怪怪物!」が、興行的には芳しくありませんでした。僕がもともとやりたかった怪奇ストーリーにしたところ、売り上げが「あの頃、君を追いかけた」の10分の1ほどという結果に…(笑)。そのため、「赤い糸 輪廻のひみつ」を撮る時は、これが最後の作品だなと思いながら撮りました。
その時はいろいろな悩みがあって、すごく自信がありながら、人生でいちばん自信がない時でもありました。台湾でのタイトルは「月老」というのですが、月老は台湾では縁結びの神様です。その縁結びの神様のお寺に毎日のように脚本を持って押しかけて、神様に向かって「これで本当にいいのでしょうか」と尋ねていましたね。
ーー台湾映画の認知が進んで、最近は各種動画配信サービスで「台湾」カテゴリーがすごく目につくようになっています。この作品も、やはり海外を意識されているのでしょうか。
多くの方に見てもらえたらいいな、という気持ちはもちろんあります。Netflixなどの動画配信サービスが流行するようになってから、1つの作品が海外に行く、海外の人に見られるということが、昔よりはすごく簡単になったなという印象はありますね。台湾の映画業界も、すごく配信サービスのランキングなどを気にしています。
個人的には、映画館での興行売り上げとか、最初の1週間の動員とか、毎回毎回すごくプレッシャーなので、ドラマやシリーズものを撮っている監督さんやチームがすごくうらやましいです。映画も最初から映画館での売り上げなど関係なく、動画配信サービスで見てもらえるような感じだったらいいなとも思います。ただ、「赤い糸 輪廻のひみつ」が台湾で上映された時に、ネット上で「映画館に見に行かなくてもいいよ」「上映が終わったらすぐ、多分1週間、2週間後には配信サービスで見られるから」と盛んに言われていました。ところが、この作品は台湾で大ヒットしてロングランになりました。売り上げで勝負するのはすごく不安ですが、ヒットして勝負に勝つと、やはりすごく嬉しいですね。
ーー最後に、日本のファンのみなさんに「赤い糸 輪廻のひみつ」の見どころを教えてください。
僕はもともと死ぬことがすごく怖い人です。この作品は、「生と死」を扱った物語で、自分がいちばん怖い「死」ということに対峙して撮りました。いろいろな悩みとか、思いとかありながらの撮影だったのですが、死んだあとの世界を描いて撮りながら「死んだ後の世界は、本当にこういう世界かもしれない」という気持ちが出てきて、以前よりは「死」を受け入れられるようになりました。まあ、今でも死ぬことが怖くないとは言えないのですが、もし本当に死んだとしたら次の人生はどのような感じになるのだろうっていう想像が、前のように怖いだけではなくなったのです。日本の観客のみなさんも、この作品を見て何か前向きな気持ちになってもらえたらいいなと思っています。