この作品を象徴する設定といえば、晃次に聴覚障害があること。晃次と紘子が夕暮れの浜辺でデートするシーン(第3話)では、「暗くなったら、私たちおしゃべりできなくなる。唇読めないし、手話も見えない」と不安な顔を見せた紘子に、晃次が手話で「でも心の声は聞こえる」と伝える美しいシーンがある。
日が暮れて、線香花火の光を頼りに手話を続けた2人。「僕は、君と出会えてよかった。君と、ずっと…」。晃次が手話であふれる思いを伝えようとした瞬間、線香花火の光が消え、あたりは真っ暗に。告白が最後まで聞けず「あ、時間切れ…」と残念そうな紘子だが、晃次はもう言葉は要らないとばかりに、暗がりの中で紘子に優しくキスをした。
「僕のメッセージは、君に会いたい。以上」
1995年の作品だけに、当時ならではの設定も今となっては新鮮だ。電話でのやりとりができない晃次とコミュニケーションを取るため、バイトに励んでファクスを購入した紘子(第5話)。晃次から「僕のメッセージは、君に会いたい。以上」のファクスを受け取った紘子がうれしさのあまり家を飛び出し、紘子の家を訪ねた晃次と行き違ってしまうエピソードが描かれた。
その後も、ファクスは重要なアイテムとしてたびたび登場。何でもないメッセージをわざわざ送り合い、受信音が鳴ってから返信が「カタカタカタ…」と出力されるまでの時間にも「なんでこんなゆっくりなの~!」とやきもきする紘子も愛おしい(第6話)。
2020年に地上波で再放送された際には、このファクスならではのタイムラグの味わいに視聴者から「こういう時代もいいな」の声も。SNSもスマートフォンもEメールもある現代、このタイムラグの愛おしさを韓国リメイク版ではどう表現するのかも気になるところだ。
TCエンタテインメント
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