コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、“魔王と勇者の関係性”をテーマに描いた漫画『逆さ魔王』をピックアップ。
作者である漫画家のメリケンさんが、2023月10月5日に本作をX(旧Twitter)に投稿したところ、5万件を超える「いいね」や反響が多数寄せられた。本記事ではメリケンさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
逆から読むと“勇者と魔王”の立場が逆転…
時間さえ操る強大な存在・魔王は、代々受け継がれる魔王を打ち破る存在・勇者に倒された。魔王は最期まで不気味に笑っており、魔王が居なくなった世界には平和が訪れ、物語は完結する――というシーンから始まる本作。
かわいらしい女性キャラの見た目をした魔王は、かつて「私は君たち人間より遥かに強い存在だ」と威張っていたが、勇者の「…人間を滅ぼすつもりか」という質問には「まさかぁ、ないない」「私としても誤解されて困っているんだ」「魔王は邪悪で人類の敵だとね」と冗談交じりに答えた。
「なら人と共に歩む気は……」と尋ねる勇者に対し、魔王は微笑して「人を見かけで判断しない方が良い」と告げる。そして次の瞬間、勇者は倒れてしまう。
実は勇者は“魔王を殺さねば死ぬ”という呪いにかかっていながらも、魔王に情けをかけ、自ら剣を下ろして死んでしまったのだった。そんな勇者に対し、「こんな弱そうな勇者に私が情けをかけられるとはね」「気に食わないから巻き戻そう」と言って時間を戻し始める。そして最後のページで魔王は、漫画の読者に対して「ページを巻き戻して逆から読んでくれ」と指示を出すのだった――。
実はこの物語、逆から読んでも意味が通じる内容になっている。本来であれば勇者が死んでしまう展開になっているのだが、逆さから読むことで“魔王が勇者に倒され、魔王のいなくなった世界に平和が訪れる”という展開に変わるのだ。
勇者に情けをかけられ生き残ったはずの魔王が、その結末を気に入らず、あえて“悪者”になり自らの死を選択するという本作。ネット上では「すっごい良い意味でゾワっとした!」「構成が天才」「1度で2度おいしいリバーシブル漫画!」「マジで天才。コマ割りも素晴らしい」「1回読んだ後に数日空けて、記憶が曖昧になった頃に逆から読むと2度楽しめる(笑)」などの絶賛コメントが相次いでいる。
作画の際には「1ページに詰め込まずに、大きなコマと絵で読みやすい漫画を目指しています」
――『逆さ魔王』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
昔ネット上で見た、反対から読むと意味の変わる有名な文章があり、それを漫画でも似たようなことができないかと思い、制作しました。
――本作では、“逆から読んでも物語がきちんと成立する”という仕掛けが非常に秀逸で印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
反対から読み返す折り返しの部分、勇者への言葉が読者への感謝に変わるところです。全く同じコマでも、前後によって意味の変わる最もわかりやすいコマだと思ってます。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
魔王が「まさかぁ、ないない」と否定するシーンですね。これで話の流れが全て変わってしまうためです。魔王をシニカルなキャラにし、友好と邪悪を両立させたキャラにすることで、違和感なく逆さまにすることができたと思っています。
――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか?
映画鑑賞などの作品視聴や、同じ漫画を描いている創作者同士の会話です。特に後者は助けられていて、多くの人に支えられていると思っています。
――メリケンさんの作品からは、ストーリーだけでなく、コマ割にもこだわりを感じました。普段作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか?
あまり1ページに詰め込まずに、大きなコマと絵で読みやすい漫画を目指しています。まずは読んでもらうことが大事だと思っているので。一枚絵に台詞をつけると言った方が近いです。
――今後の展望や目標をお教えください。
今後も意外性と面白さを両立した漫画を描いていきたいです!また短編だけでなく、長編連載にも挑戦してみたいです。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
遅筆ではありますが、その分面白いものを提供したいと思っていますので、楽しみにしていただけると幸いです!