<マイハル>ドラマPが明かす制作秘話 キャスト陣の個性や実際の関係性を脚本に還元「1位2位を争うぐらい良い空気の現場」
「両方の世代の人たちから共感してもらえるようなドラマに」
――大人の女性の悩みや葛藤がとてもリアルに描かれていますが、脚本を作るにあたってどのようなことを意識されていますか?
まず、あくまでも“青春ラブコメディー”であるということを念頭に置いています。“ただのラブストーリー”には見られたくないということは当初から話していて、佐弥子という主人公が人生をもう一度やり直すために大学に入り、自分よりも若い世代の人たちから刺激を受けて成長していくということを大前提に描きたいと思いました。
そういった刺激を受ける中で、勉強面や将来の考え方についてもそうなのですが、恋愛面においても今まで持っていなかった感情が生まれてくるような、そんな姿を描きたいという思いがあり、その点を気にしながら脚本を作ってきました。
もう一つ意識していたのは、一方的にならないようにすることです。年上が年下に人生の経験値から何か影響を与えるということだけでなく、若い人からも刺激を受けるということが、相互作用で働いていくようにしたいという思いがありました。
拓が実年齢よりも少し大人びた男の子であるということと、アラサーの佐弥子が精神年齢が若く大人になりきれていない部分もあるということ。その2人だからこそちょうどいいバランスで、お互いに教えたり教えられたり、気付かされたり…みたいなことができたら、両方の世代の人たちから共感してもらえるようなドラマになるのではないかと思っています。
私と北川さん、編成の武田梓さん、企画の方々含め、30~40代ぐらいの同世代の女性陣が多いので、佐弥子側の感情がより具体的になりやすいというのはあるかもしれないですね。でも、若い人たちに「拓側の気持ちも分かる」と思ってもらえる要素は残したいと思い、佐弥子目線ばかりにならないように気を付けています。
――拓の気持ちについてはどのように作り上げていきましたか?
拓に関してはモデルがいたわけではなく、道枝さんから得られる印象で作り上げている部分が多かったと思います。私は、若い男の子の時代は経験していないので、そこはある種ファンタジーみたいなところがあって、「こういう感覚であってほしい」「こう動いてほしい」みたいな願望的な思いがあるのですが、それを道枝さんに実際に演じてもらう際には、なるべくリアリティーを追求して、ファンタジーの世界にならないような落とし込み方にすることは意識しました。
かつ、今回監督が全員男性なので、そことのセッションもありました。私たちが「こう言ってほしい」「こういう感じでやってほしい」と思っていたことが、実際に男性陣の目線からすると、「いや、男はそんなふうには言わないよ」といったようなせめぎ合いもあって。こちらの理想ばかりを押し付けてもリアリティーのあるドラマにはならないので、監督陣と話し合いながら、キャストの皆さんとも相談していくような現場でした。
――キャラクター設定について、キャストの皆さんとは何か話をされましたか?
キャラクターに関しては、「こうだと思う」といったような断定的な意見を言われるというよりは、「こんなふうにしてみたいんですけどいいですか」とセッションしていく印象でした。
あとは、ありがたいことにキャストさん同士もすごく仲が良く、スタッフとのコミュニケーションも年齢関係なくすごくよくしてもらえて、自分がやってきたドラマの中でも1位2位を争うぐらい良い空気の現場だと思っています。
そういった普段の会話の中から、「この人のこの感じをキャラクターに投影させたい」と、役のイメージが膨らんでいった印象があります。彼らが役と向き合ってお芝居で見せてくれたものや、コミュニケーションを横で見ていて、「この役とこの役のこういうシーンを作ってみたら面白いかもしれない」と思うことがすごく多かったです。
そういうふうに役者さんがキャラクターを育ててくださって、それを脚本に還元できたシーンが後半に結構あって、「これがオリジナルドラマの醍醐味だな」と思いながらやっていました。
――具体的にはどのシーンですか?
例えば、北川さんは、キャスティングが決まった時点で、澄香(箭内)と寛太(濱尾)のエピソードを描いてみたいという気持ちが湧いたらしく、それが第7話で放送されています。
一方で、第7話のメインはその2人の恋愛模様ではあるのですが、それとは別に、2人を取り巻くキイナ(伊原)や真凛(飯沼)、龍之介(水沢)が、その2人の恋愛に対してどういうアプローチをするかというシーンも、あの3人に演じていただいたからこそのシーンになりました。
真凛と龍之介がサグラダファミリ家のルールを話し合うシーンは、2人が普段見せない顔を見せるシーンになったと思っています。特に龍之介なのですが、サグラダファミリ家のメンバーの恋愛から、自分の人生に思いを馳せて語るシーンがあって、そこは彼が龍之介を演じたからこそ作ってみたいと思ったシーンでもあったし、実際に演じてもらったら想像をはるかに超えた良いシーンになりました。
あと、キイナは前半は少し小悪魔っぽい、拓を振り回す感じのお姉さんでしたが、実は彼女には彼女なりのコンプレックスがあって、それが第5話で佐弥子との涙のシーンとして描かれました。そこで、「この子も普通の女の子なんだな」というのが分かったかと思うのですが、あの2人の涙のシーンを見て、第7話の女の子4人のシーンを作っています。あのシーンは、視聴者の女性たちにはぐっとくるシーンになっているのではないかなと思います。
ジェイ・ストーム
発売日: 2023/11/15