相楽を守ろうとする商店街自治会、商店街を見捨てた相楽
苦心して手に入れた“徴税禁止リスト”は、直後にリストに掲載されていた相楽グループの子会社に捜索が入ったことで“偽物”扱いされてしまった。いわゆるトカゲの尻尾切りというやつだが、「サガラトノサキ製作所」もそんな法人の一つ。法人住民税や固定資産税など合わせて約2億円もの滞納が発生していることが判明したため、このチャンスを逃すわけにはいかないと第三係のメンバーは奮起する。
「なんか久しぶりっすね、みんなで捜索するの」「増野くんたちも臨宅の予定がなければね」。惜しくも全員でとはいかなかったが、増野と加茂原を除いた5人でサガラトノサキ製作所へと家宅捜索に訪れた。
しかし、いざ捜索に入ろうとした第三係の前に現れたのは、守屋率いるみゆきの商店街・自治会のメンバー。商店街の集会所に場所を移して係長である橘勝(光石研)と華子、そして饗庭が話を聞くことに。守屋は第一声で「サガラトノサキ製作所を見逃してくれ」と相楽グループへの徴収を止めるよう懇願する。
「あんたたち、あそこに差し押さえに入ろうとしてたんだろ?困るんだよ、サガラトノサキにもしものことがあったら私たちはどうなるか…そもそもあんな大企業が滞納するなんて」と、市役所側の手違いではないのかと指摘する自治体のメンバーたち。せめて半年から1年猶予が欲しい…守屋は商店街の住民の願いを代表して話を続ける。「市民たちの声に耳を傾けてくれ、お願いします」と自治会のメンバーは頭を下げるのだった。
しかし、そもそも第三係が捜索に入る直前に彼らが止めに来るという構図がおかしい。サガラトノサキ製作所に家宅捜索が入ると言う噂をどこで耳にしたのかと饗庭が尋ねると、自治会メンバーたちの反撃が始まる。
みゆきの市には相楽グループに関わる市民がたくさんいるのにもかかわらず、なぜ目の敵にするのか…相楽グループのおかげで生活が成り立っているという守屋らは、納税課の行動に不信感を抱いていると明かす。
「“みゆきの市に相楽あり”ですもんね」と煽る饗庭。「私には娘たちのために、この街を守る義務がある。そのために、相楽との関係は必要不可欠なんだ。娘たちの世代が相楽たちと力を合わせれば、必ず前のような街に戻ってくれる。」と守屋は熱く語る。
「私たちの力になってくれているのは、あんたたち公務員じゃない。相楽なんだ!!」「そうだそうだ!!」守屋の言葉に、自治体メンバーたちの賛同が続く。しかし、饗庭が「ってお父さんおっしゃってますけど〜」と声を上げ、浜村が香澄を連れて現れると空気が変わった。
香澄が苦しそうな表情で口を閉じているのを見て取り、「言いづらいなら俺から話しましょうか。みゆきの商店街の一帯に、相楽グループのショッピングセンターを立てる計画があるって」と饗庭が受け取る。相楽グループを信じていた自治体メンバーが、驚きの発言にざわつき始める。
「誰に頼るとか、誰が助けるとか大事なのはそこじゃなくないですか」
ずいぶん前からショッピングセンター建設の計画は進められていたようで、香澄は商店街の代表として誘致に向けて相楽グループと何度も打ち合わせをしていたそうだ。
「この商店街を今のまま続けるなんて無理」と話す香澄。「だからそれは、もう一度相楽と…」とうろたえる守屋の言葉を遮るように、「その相楽が、こんな商店街なんてもう要らないって言ってるの」と香澄が冷たく言い放った。衝撃の言葉に、自治会のメンバーはどよめく。
相楽と一緒に昔のような商店街に戻すと意気込んでいた守屋たちの願いはもうかなわない。相楽にとっては、もう商店街は過去のもの。全部取り壊して、新しいショッピングセンターの建設に向けて動き始めているのだという。
「必死になって守ろうとしているのはお父さんたちだけなんだよ!!」と、香澄は大きな声で守屋に言い放った。商店街を大事にしてきた父の背中を見ているからこそ、非常な相楽の姿を正しく認識してほしいのかもしれない。
強い言葉で自治会メンバーに発破をかける香澄だったが、実は商店街存続の道を探すため相楽との交渉役を買って出ていたという経緯がある。しかし、香澄がどれほど言葉を重ねてもショッピングセンターの建設は避けられないのが現実だった。
せめて商店街で働いていた人々が変わらず近くに住み続けられるようにしたり、再就職先を手配してもらったり、良い条件で街を出ることができるように…とさまざまな支援ができるように水面下で行動していたのだ。だがそれでも、父・守屋を筆頭に相楽を頼って商店街を復活させようと意気込んでいる自治体のメンバーには、いまのいままで言い出しづらかったようだ。
頼ってきた相手の非常な裏切りと、どうしようもない現実に打ちのめされる商店街自治体。そこに饗庭らは「みゆきの商店街の今後に関するプラン」と銘打ったある計画を提案する。具体的には若者の移住受け入れや、地元の銀行と協力した事業再生、親族に頼らない事業の継承を主な柱とする“地域再生”を目指すプラン。
同プランは、相楽の手を借りてクリアを目指していた商店街最大の課題「高齢化による後継者不足」を解消するための計画でもある。資金面でもクラウドファンディングを活用することによって、相楽グループに頼らずに予算を組めるはずと提案が続く。
「誰に頼るとか、誰が助けるとか大事なのはそこじゃなくないですか。皆さんを助けることができるなら使える手は全部使います」と得意げな表情の饗庭。「皆さん、公務員なめないでくださいね」決めぜりふに合わせて腕を組み、ほほ笑む姿はいつも以上に輝いて見えた。
SNSでも「娘ちゃん、1人で頑張るなよ…」「ラストスパート息を飲んでみちゃった、緊張した…」「今日の決め台詞の饗庭ちゃん、優しく穏やかな表情…。大変よくできました」「次で最終回か…。終わらないで」と言った声が相次いだ。