静かだから恐ろしい、迫力ある映像づくり
ハイライトとなるラストの事件は、“恐怖”の構成が強く印象に残った。たとえばゴジラのような巨大生物が直接攻撃してくる恐怖は、わかりやすいインパクトとして響く。だがその恐怖は、ある種“アトラクション”のように単純なものだ。根強い人気を誇るサメ映画など、明確に見える強敵があおる恐怖はわかりやすい分さっぱりとした味わいになる。
一方で本作の描く脅威は、目に見えず、静かに忍び寄る。“なにかが起きている。だがなにが脅威なのかわからない”という恐怖は、いわばジャパニーズホラーに近いじっとりと心の底に訴えかける恐怖感が強い。
クジラなどの海洋生物が取る異常行動の意味、突如ロブスターがもたらした強力な感染症といった物語の主軸は丁寧に描くが、海が船を飲み込む異常なラストは本当になんの説明もないまま。広い海の真ん中で前触れなく湧いた気泡、本来あるはずの浮力を失って静かに沈んでいく船の姿は、船員の戸惑いと恐怖、絶望を視聴者へ届けるにあまりある。
正体の見えない恐怖を、これでもかと視覚的に訴えかけてくる「THE SWARM/ザ・
スウォーム」。果たして船を襲った現象の謎は解明されるのだろうか。そして敵はいったい何者なのだろうか。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
発売日: 2019/12/04