“海の恐ろしさ”を改めて思い知らされる
希望を抱くに至った第5話。だが、ラストシーンでは突如発生した津波が多くの人を押し流してしまうという悲劇が映し出される。被害者のなかには、シグルが愛していた女性・ティナの姿も。
ティナとシグルの人間関係はこれまでも何度か描かれていた。恐らくは一度破局を迎えた2人。それでも2人のやり取りには、わずかな未練を感じさせる言動が入り交じっていたのだ。
ティナが所属するホーヴスタッド・エネルギー社の不正を目の当たりにしたシグルは、ティナがもともと「新種生物がいようとも無理矢理開発を進めるつもりだった」と疑ってしまう。しかし実際に彼女は会社の裏切りを知らず、第5話では会社を辞めて街を離れることを決断することに。
最後の挨拶にシグルの家へ訪れたティナに、シグルは疑ったことを謝罪する。そして「君のいない人生なんて考えられない。いや、考えたくない」と伝えるのだが、ティナはシグルの言葉を背中で受け止めると、たっぷり時間をかけてから「さよなら、シグル」とだけ残して家をあとにするのだった。
しかしその後、いまのボーイフレンドに別れを告げるため海岸にある店を訪れたティナは津波の予兆を目の当たりにする。海鳥が一斉に飛び去り、潮が異常なほどに引いていく。やがて壁のように迫り来る津波を見てパニックになった人々は、悲鳴を上げながら避難する。
ティナのボーイフレンドはいち早く車に乗り込んで出発していたが、「待って!」と叫ぶ彼女を待たずにアクセルを踏んだ。ティナは絶望しながら自分の車を探してなんとか乗り込むが、津波はそのときすでに水飛沫が車の窓を濡らすほどの距離に。絶望の表情を浮かべてシグルにかけた電話は繋がらず、ティナは「シグル、私よ。私も言わせて。あなたなしの人生は考えられない」と最後の音声を残すのだった。
すれ違う大人の恋愛を描いたワンシーン。ただのパニックホラーではなく人間関係をしっかり入れることで、登場人物たちのキャラクターに深みが増す。ありふれた手段ではあるものの、いまだ海洋異常の正体も掴めないなかで次々に起こる悲劇は絶望感もひとしお。
第5話では問題を認識している学者同士が繋がり、力を合わせて進む体勢が整った。海で起きる数々の異変の正体を掴むまで、あと一歩のところまで来ているはずだ。
◆文=ザテレビジョンドラマ部

Happinet
発売日: 2019/12/04



























