木村拓哉ら世界各国の豪華出演者が集結したHuluオリジナル「THE SWARM/ザ・スウォーム」。“宇宙よりも謎が深い”と言われる深海を舞台に、世界の海で起きている不
可解な現象を追うSFサスペンスだ。最終話では恐怖心から“対抗”を試みた結果と、1人の大きな決断が招いた結末が描かれた。本記事では、考察を踏まえながら同話を振り返る。(以下、ネタバレを含みます)
“イール”の浸食は対話の意思なのか
トロンヘイム大学教授のシグル・ヨハンソン(アレクサンダー・カリム)率いるチームが乗船する船に、ミフネ財団の会長・アイト・ミフネ(木村拓哉)がやって来る。シグルは彼に“イール”のわかっている情報を共有。1つの単細胞生物として単独で行動できる一方、ときには巨大な多細胞生物のように集合体となるなど、自由に密度や形を変えられる前代未聞の生物であることを説明する。
「この地球上で見たことがありません」と興奮したようすのシグル。しかしミフネは真剣な表情を浮かべたまま、「これがアリシアの体を蝕んでいると?」と問う。すると医師のセシル・ローシュ(セシル・ドゥ・フランス)はそれを肯定した。
セシルいわく、“イール”はアリシアの体内に入り、アリシアの細胞と融合しようとしていると言うのだ。そして話は天体物理学者のサマンサ・クロウ(シャロン・ダンカン=ブルースター)が発見した“イール”からのメッセージに切り替わる。
研究者チームが送ったメッセージに対し、“イール”が返してきたメッセージは想像もしえないものだった。音の高低をグラフにしたとき、浮かんできたのは2億5千年前に存在していた超大陸パンゲアを取り囲んでいた広大な大洋「パンサラッサ」。その景色は“イール”がかつて南極海から見ていたものではないかと、サマンサは主張した。
“イール”が集合的な記憶を持ち、DNAを通して記憶を後世に受け継いでいるという説が浮かぶ。海洋生物研究所(IBM)の研究員・シャーロット・“チャーリー”・ワグナー(レオニー・ベネシュ)は、“イール”からのメッセージが「これ以上、海を破壊させはしない」というものではないかと推測を述べる。
チャーリーの主張をくみ取りながらも、シグルは“イール”が交信に応えたという点に着目。ただちに人類を抹殺しようという意思はなく、まだ対話の余地があるのではないかと考えられるからだ。
人類の“攻撃”に、海が荒れる
“イール”が侵入したと思われる潜水艇格納庫の水を採取し、セシルが“イール”に対して反応を示すさまざまな薬品を試す。そのなかで、劇的な反応があったのが“ケタミン”だった。痛みの信号を遮断し、視聴覚に歪みをもたらす救急治療で使われる薬だという。これを“イール”の溶け込んだ水に垂らすと、“イール”は分解されるように死に至る。
人類には害がなく、“イール”への特効薬となるケタミン。その薬効を知ったミフネは「イールへの対抗兵器になるか?ラボの外で」と問いただす。つまり、“イール”を殺すための手段として、役立つのか…という質問。慌てたシグルは、「ようやくイールを発見し、交信ができた。なぜ殺すって話に?」とミフネを止めた。
しかしこうしてチームが北極海に赴いている間も、世界各地では大きな被害が続発していることを知っているミフネ。間が悪いことについ直前、クルーの家族がいる西アフリカを巨大な津波が襲った。壊滅的な被害報告は、ニュースとして彼の耳に届いている。
だがシグルも譲らない。“イール”がどれだけ環境と密に繋がっているのか未知数の状況で彼らを殲滅する行動に出れば、環境への影響も計り知れないからだ。「もし海が死ねば、僕らも死ぬ」科学者チームはシグルの言葉に理解を示すが、船長から「もし世界がイールの存在とその恐ろしさを知れば、あらゆる兵器で攻撃する」という現実的な想定が返ってきた。
交渉を有利に進めるためにも、こちらに“兵器”があることを示していた方がいいだろう…というミフネの言葉に、シグルも最終的に首を縦に振る。そして検証は、潜水艇格納庫のプールでおこなうことに。
セシルがケタミンを1滴、プールに落とす。すると変化は劇的だった。“イール”をはらんだ水が、物理法則を無視して立ち上がったのだ。強烈な音波がガラスを砕き、海まで響いた。船が瞬間的に停電を起こし、ほとんどのシステムがエラーに。明るくなったときには、プールに乗組員・ルーサーが浮いていた。彼は救命措置も虚しく、間もなく死亡。
そして海の怒りはまだ続く。動力を失った船が、引き寄せられるように海を滑り出したのだ。
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
発売日: 2019/12/04