テレビ大好きイラストレーター・渡辺裕子さんが、お気に入りの番組をかわいいイラストで紹介する連載「いつもテレビをみています」。今回は特別編として、現在放送中のドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS系)をピックアップ! 物語がクライマックスに向けて盛り上がっていくなか、その魅力をイラストと共にたっぷりと語り尽くします。
平成以降生まれの人は、どんなふうに見ているんでしょう
「あの時代を、よく無事に生き抜きましたよね、私たち」と昭和生まれ世代のみなさんとうなずきあって見ている気分になるドラマ「不適切にもほどがある!」。 バスも職員室もタバコの煙が充満。冗談で「ブス」「男のくせに」「女のくせに」などと言われ続ける。ドラマを見ながら思い出す昭和は、あまりにもハード。平成以降生まれの人は、どんなふうに見ているんでしょう。
そんな昭和61年にバスに乗ったら、なぜか令和6年にタイムトリップしちゃった中学教師の小川市郎。彼にとっての当たり前が令和では不適切とされ、周りの人々と摩擦を起こすうちに、令和ならではの別の困りごとが浮かび上がり、なぜか終盤にはミュージカルとなって全員で歌い踊る。ミュージカルゲストの豪華さと、わかるやつだけわかればいい的な小ネタを毎回楽しんでいたのですが、第5話の展開でひっくり返りました。
どんな結末でも、笑いながら見終わることができますように
宮藤官九郎さんのドラマって、散々笑ったあとに、災いと喪失が待ちかまえていることがあるんですよね……。「あまちゃん」も「木更津キャッツアイ」も「池袋ウエストゲートパーク」も。その流れがこのドラマでも来てしまうとは。今、これまでの話を見返すと、いろいろなところにこの回までの種が蒔かれていたことに気が付きます。渚さんの「阪神・淡路の年に母が死んじゃったんですね」というセリフ。秋津が市郎にスマホでググって震災について教えるシーン。渚さんはトラブルのたびに市郎に助けを求めるほど慕っているのに、抱き合ったりキスしようとするとタイムパラドックスの警告として「ビリビリ」して近寄れない理由。ふたりが惹かれあったのは恋ではなく、祖父と孫だからだったんですね。
第6話では市郎の娘の純子も令和にやってきて、自分の娘だとは聞かされないまま、渚さんと会う。「かっこいいね、ばりばり働いて。尊敬しちゃう」と純子ちゃん=お母さんに褒められ、「子ども、大好き」と言ってもらえた渚さんの、泣きそうな笑顔に胸がぐっとつまりました。
1995年1月17日の市郎と純子の運命は、変えられないんだろうか……手紙に同封された新幹線の切符は「1月16日から二日間有効」だったけど、もっと早い日にするとか。でも何か変化させようとすると、ビリビリってなってしまうのかなあ。市郎なら、昭和らしい強引さでビリビリにも打ち勝ち、純子ちゃんだけは救ってしまいそうな気もする……どんな結末でも、笑いながら見終わることができますように。
■イラスト・文/渡辺裕子