木村拓哉をはじめ、世界各国の豪華出演者が集結したHuluオリジナル「THE SWARM/ザ・スウォーム」。強烈な印象を残した全8話の同ドラマは、「Game of Thrones(ゲーム・オブ・スローンズ)」のフランク・ドルジャーが製作総指揮を務め、ヨーロッパ最大級の水中スタジオを駆使して描かれた映像美は圧巻のクオリティを誇る。忍び寄るように静かに日常が犯されていく恐怖と、“いまの人類”らしい対処法が呼びよせる結末…。視聴後に多くのことを考えさせられる名作を、同記事でいま一度振り返る。(以下、ネタバレを含みます)
「THE SWARM/ザ・スウォーム」とは
同作は2004年にドイツで450万部を売り上げたフランク・シェッツィングのベストセラー小説「THE SWARM」が原作。27言語に翻訳された同作を、数々のエミー賞受賞歴を誇るフランク・ドルジャーが製作総指揮を務め仕上げた超大型国際プロジェクトだ。
ある日を境に、世界中の海で不可解な現象が次々と起こり出す。クジラやシャチが突如として人間を襲い、異様な数のクラゲが海を埋め尽くし、同時期に世界各国で異様な動きを続ける新種の生物が発見される。
たとえば第一話で海洋研究家であるレオン・アナワク(ジョシュア・オジック)が目撃したのは、海面から飛び出して船を真っ二つに割るクジラの姿。気が立ってしまう繁殖期でも近くに子どもがいたというわけでもなく、あきらかに船へ攻撃する意思があった。
そしてそこへ、示し合わせたように“海のギャング”シャチの群れがやってくる。遠くから一直線に船を目指して進むシャチたち。船に乗っていたホエールウォッチングの観光客が次々と被害に遭い、レオンの知り合いであったガイドの女性も彼の目の前で海中へ引きずり込まれた。
さらにはロブスターによる“黒い液体を吐いて死ぬ”高い致死率を誇る未知の感染症が登場したほか、小型の海洋調査船が海面の謎の発光とともに突如として海の底へ沈んでしまうという事故も。こうした異常によって危険を肌で感じ取っていた人類だったが、“常識”と“利益追及”が問題解決の道を阻む。
だが調査船沈没の謎を追っていたチームと、クジラの異常行動を研究していたチームは同時期に“ある現象”を目にする。ありえないほど長く発光し、特定の音を発する微小な“なにか”。未知のできごとではあったが、それは各国の研究者たちを結ぶきっかけになった。
深海に生息する未知の生物が数々の異変に関わっていると考えた各国の研究者たちを繋いだのは、海運業を営むミフネ財団。会長であるアイト・ミフネ(木村拓哉)は自らの利益のため、そして環境保護のために研究者たちを支援する。
やがて集った研究者たちは、それぞれの持ち寄ったデータから推論を導いた。それは驚きの事実を示唆するもので…。
目を離すことができない映像
本作で製作総指揮を務めるフランク・ドルジャーは、インタビューで「本作の映像で特にこだわったところは、自然の雄大さと人間には敵わない力を同時に表現することでした。人間と自然が戦うことになれば最終的には自然が勝つというわけです」と明かした。
その言葉通り、本編では得体の知れない漠然とした自然の恐怖を見事に表現。また撮影では、「Game of Thrones(ゲーム・オブ・スローンズ)」で培ったさまざまな表現方法が生かされているそうだ。
撮影は水中のシーン以外すべてイタリアとベルギーでおこなわれたが、映像では世界各国で発生している異常を描く。すると当然国ごとに異なる景色、雰囲気を表現しなければならない。そこでフランクはそれぞれの国を別の色彩、質感、構成、光を使って表したという。
さらに本編の鍵を握る海中の描写も見事。ヨーロッパ最大級の水中スタジオを使っておこなわれた撮影によって、「海を1つのキャラクターとして描く」というフランクの目的に沿った真に迫った映像が完成した。
あるときは不気味に船の底を見つめ、あるときは大きな力のうねりとなって船を襲う。光が透けて見える水面の美しさの奥に、得体の知れない暗黒の世界が口を開けている。“自然”に対する人の小ささを意識させ、さらに大いなる意思をも感じさせるような音や光の演出は見事というほかない。
国境を越え、才能あふれるクリエイター達を結集させて取り組まれた一大プロジェクト。片時も目を離すことができない素晴らしい映像に仕上がっている。
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
発売日: 2019/12/04