検察側が提出する証拠を今回も次々と覆す明墨
富田正一郎(田島)は、クラブで居合わせた常連客の工藤(宮尾)ともめ事を起こし、クラブを出たところで暴行したということで罪に問われている。富田が今回明墨が弁護する被告人。
検察の緑川(木村)は、暴行されたときに工藤自身が富田の顔を目視していたこと、2人がクラブの中で口論となっていて、それを第一発見者となった人物が目撃していたこと、それをもとに起訴に至ったと冒頭陳述で伝えた。
しかし、明墨は富田の無罪を主張する。犯行時刻に富田は友人からの電話を受けて、店の外で待っていたその友人の車に乗って帰ったという“アリバイ”があるという。
さらに明墨は、事件の現場となったクラブの店長や常連客から、普段から工藤がかなりのトラブルメーカーだったという証言を得るなどして、揺さぶりをかけ、事件当日を再現したVTRを提出して、工藤の証言の不確かさを主張し、次々と検察側の証言や証拠を覆していった。
正義感を振りかざす赤峰を、明墨が正論で一蹴
以前であれば、明墨の鮮やかな手法に赤峰も感心していたかもしれないが、不信感を募らせている彼は「先生は、また犯罪者を無罪にするんですか?」とかみつき、クラブの店長の証言は買収して得たものだと決めつけた。
富田が無罪ではないと赤峰が思うのには、明墨への不信感のほかにも理由があった。以前、赤峰は富田が関わった事件を担当したことがあり、その時も政治家である父親がもみ消してしまい、他の人に罪がなすり付けられたという過去があったから。
正義感を振りかざす赤峰を、明墨は「裁判の結果こそが依頼人の人生を左右する。だからこそ、われわれ弁護士は己の人生を懸けて裁判に勝たなければならないんだ。君には、その覚悟と力がなかっただけだ」と正論で一蹴。
その明墨の言葉と態度が、赤峰に火を付けた。富田が罪を犯した証拠を探すために駆け回り、事件現場近くに停まっていたトラックを突き止めて、ドライブレコーダーの映像を入手するところまで行った。
しかし、すでに明墨がその映像を回収しており、しかもその映像には富田が友人の車に乗り込む姿が映っており、富田の無罪を証明する証拠となった。
明墨は赤峰に、第一発見者が富田に罪をなすり付けているという仮説を伝える。そして、富田の犯行だと決めつけている赤峰に、「個人への恨みから、その人間を有罪に持ってこようとする。君がやっていることは犯罪者と何も変わらないんだよ。冤罪(えんざい)を生むのはそういう人間だぞ」と言い放つ。
依頼者を無罪にせず、親子ともども罪を償わせる方向に
今回も町工場の事件と同じような展開になって、富田が無罪となるのか。そう思っていたが、今回はそうではなかった。実は、赤峰が見たトラックのドライブレコーダーの映像は差し代わったもので、本当の映像には富田が車にやってくる姿は映ってなかった。
そして、富田の父親の秘書がトラックのドライブレコーダーを証拠として提出しないように買収している映像が法廷で映し出された。
「まさか被告人が父親と示し合わせて罪を隠蔽(いんぺい)しようとしてたなんて」と、明墨は驚くそぶりを見せ、検察側が提出した本物の映像証拠に反論せず、受け入れた。それによって富田は罪が確定し、父親の不正も世に出ることとなった。
殺人を犯した被告人を無罪にした明墨が、今回は依頼人の利益を守らず、親子ともども罪を暴く結果になった。ここから、「どんな依頼人も無罪にする」ということを曲げてでも、正義感で周囲が見えなくなってしまった赤峰に「思い込みや私情で突っ走るな」と警告し、諭しているようにも見え、明墨の違う一面が見えたような気がした。
SNSにも「いきなりパターンが崩れた。今度が楽しみ」「明墨先生が、本当に出来る弁護士だということを再確認」「明墨先生への見方が変わった」といった、驚きの声があふれていた。
◆文=ザテレビジョンドラマ部