コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、尾崎かおりさんが描く『全身武器の球体関節人形がパイを届ける話』をピックアップ。
2024年3月24日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、4.4万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、尾崎かおりさんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
“全身武器”の美少女人形が魅せるアクションシーンに大反響
おじいさんは、美少女を模した球体関節人形と美味しいパイを作った。ケンカして谷の向こう側へ引っ越してしまったおばあさんと仲直りするために――。
「焼きたてのパイを届けておくれ 頼んだよ ルナリア」
おじいさんが伝えると、フリルが施された可愛らしいドレスを身にまとった美少女・ルナリアは、無表情を保ったまま谷を越える吊り橋を渡り、おばあさんの家へ向かう。しかし、この辺りは盗賊たちが住みついているため、ルナリアは襲撃に遭いボロボロにされてしまう。
諦めきれないおじいさんはルナリアを修理し、無事に盗賊たちを退け谷を越えるための改良を施した。身体能力を高め、身体のいたるところに銃や罠などを忍ばせたのだ。
強化されたルナリアは、改めて焼きたてのパイを持っておばあさんの家へ向かう。前回と同じく盗賊たちはルナリアを襲撃するが、服や体に隠された彼女の武器に太刀打ちできず、次々と返り討ちに遭ってしまった。湧いてくるように現れる盗賊たちに、最終的には満身創痍の姿になったルナリアであったが、なんとか身体は動き、ぎこちない足取りでおばあさんの家へたどり着いた。
ルナリアがドアをノックするとおばあさんが出てきた。おばあさんは表情を変えずに彼女を招き入れる。そして、受け取ったパイを2人分取り分けてため息をつきながら一口食べる。パイが入っていたカゴの底には、おじいさんから「仲直りしよ?」の手紙つき。険しい表情のまま変わらぬおばあさんだったが、果たして仲直りできるのか…夫婦の結末が気になる展開で作品は終わっている。
本作には読者から多くの反響が集まり、「この話めっちゃすきー!」といったストーリーに対するコメントをはじめ、「アクションシーン大好き」「美しい動きと表情に魅せられる」と、ルナリアのデザインや動きに引き込まれた人も続出した。本作を読む際には、ぜひ戦闘シーンにも注目してみてほしい。
作者・尾崎かおりさん「バズらなかったら引退も考えていた」
――『全身武器の球体関節人形がパイを届ける話』の投稿へは、多くの“いいね”やコメントが寄せられています。今回の反響をどのように感じていらっしゃいますか?
2000いいねくらい貰えればと思っていましたが、投稿1日目は1500いいねくらいだったので、しょんぼりして寝ました。翌日起きてみたら万バズしていたので4度見くらいしました。最近自信をなくす事が続いていて、バズらなかったら引退も考えていたのですが、気力を取り戻しました。
――セリフには英文も併記されていました。本作を創作する最初の段階から海外の方へも見てほしいという思いがあったのでしょうか?
もともと私の作品は多数の国で翻訳出版していただいているのですが、自分が不勉強なため、海外のファンとはあまり交流できていませんでした。今回セリフが少ない作品だったので、これくらいだったら英訳付けられるかもと思ってやってみました。
結果海外の方にもたくさんお読みいただくことができて良かったです。
――球体関節人形のルナリアは、長い黒髪に容姿端麗、服装も可愛らしくデザインへのこだわりが感じられました。ルナリアの作画で一番力を入れたところやお気に入りのポイントをお教えください。
ゴスロリは全然詳しくなくて、時間もかけずにパパッとデザインしました。ただ、長い二本の長い髪やボリュームのあるスカートは、アクションした時に動きが出て映えるようにしました。フリルの描き込みは思いの外時間がかかって大変でしたが、フリルからゴツい銃器が出てくるというコントラストは好きです。
――表情を変えないルナリアですが、男たちの襲撃を退けたあとにパイの無事を確認してホッとする表情を見せた瞬間があります。これは、おじいさんのおばあさんへの思いがルナリアに伝わって感情を持ったということなのでしょうか?
それは謎です。人形の良いところは、見ている側の想像力を掻き立てるところだと思うので、皆様のご想像にお任せします。
――おばあさんはボロボロのルナリアが家に来たとき、なんの疑問も持たずに中へ招き入れました。長年の夫婦関係から、一目見てルナリアがおじいさんの使いだということがわかったのでしょうか?
わかっています。裏設定ですが、「ルナリア」という少女は、若くして亡くなったお爺さんとお婆さんの娘なのです。娘亡き後、お爺さんがルナリア制作に没頭するようになってしまい、ドン引きしたお婆さんは谷の向こう側へ引っ越してしまいました。その後、谷に盗賊が住み着いてしまい、交流が難しくなったためにルナリアを使いに出したのです。
――最後に、読者やファンの方へメッセージをお願いします。
いつも好き勝手に描いたものを読んでいただき、ありがとうございます。
これからも好き勝手に描きますので、よろしくお願いします。