コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、オキエイコさんの書籍『ねこ活はじめました かわいい!愛しい!だから知っておきたい保護猫のトリセツ』に収録されている『保護猫が家猫になるまで』をピックアップ。作者が描く“猫と人が織りなす温かな物語”は多くの読者を惹きつけ、2月には書籍『もしもなんて来ないと思ってた猫』も発売された。
2024年4月3日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、5.8万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、オキエイコさんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
これから猫を迎えたいと思っている人に知ってほしい“保護猫”の選択肢
作者のオキエイコさんは「いつか猫と暮らしたい」と思っていたため、家族で“ペット可のマンション”に引っ越してから“ウチの子探し”を始めた。最初はペットショップから探し始めたが、ある日、友人に会った際に“保護猫を迎え入れる”という選択肢を知る。保護猫についてあまり知識がなかったという作者は、それから情報収集を始め、保護猫は飼い主の病気や育児崩壊、DVなど、悲しい現実によって手放された子が多いということを知る。そして、誰かがお迎えしないといつかはその命が絶たれてしまうのだ――。
保護猫を選択肢に入れた作者は、家族にも理解を得て講習会でさらに知識を深めた上で、保護猫カフェや動物愛護センターに足を運んだ。そこで4歳の三毛猫“しらす”と出会う。“ビビッ”と運命のようなものを感じた作者は、しらすについて詳細を尋ねると、前の飼い主の元ではご飯をまともに与えてもらえず、いわゆるネグレクトにあっていたそうだ。
作者は子猫を迎え入れる予定だったため、成猫である“しらす”は本来の希望とはズレていた。しかし、作者はしらすから目が離せず、“この子を絶対幸せにしたい”と思った。
「この子に応募させてください」
しらすには複数の家族から応募があったため、抽選になったもののくじ引きで「〇」を引き当て、無事にしらすが作者のお家へやってくることになった。作者の家族はしらすを選び、しらすからも作者の家族が選ばれたのだ。
「ここが今日からしらすのお家だよ」
猫の生活に必要なものを揃えたあと、正式にしらすを引き取り、無事にウチの猫になった。これから少しずつしらすと家族になっていく――。
保護猫が家猫として迎えられるお話を描いた本作は、たくさんの“いいね”とともに「戸惑いや決意がリアルに描かれている」「保護団体からの譲渡を検討されている方におすすめしたい」などの声が多く寄せられた。保護猫について知識を深めたい人は、ぜひ一度読んでみてほしい。
作者・オキエイコさん「『リアルな引き取りの過程』を記録したい」
――『保護猫が家猫になるまで』を描こうと思ったきっかけや、作品に込めた想いなどをお教えください。
保護猫という選択肢は今では一般的になってきましたが、まだまだ「敷居が高い」と思っている方も多いと思います。かつての私もそうでした。
だからこそ「リアルな引き取りの過程」を記録したい、それを読んで欲しいという思いがありました。
当時保護猫関連の書籍は、専門家が書いた本や保護施設側からの発信がほとんどでした。だからこそ、引き取る側の家族として新しい里親さんの目線で書き上げました。
――しらすちゃんには複数の応募があり、抽選で保護先が決められることになりました。抽選箱からくじを引き、用紙に書かれた「〇」を見たときの感想をお聞かせいただけますでしょうか。
不安でありながらも、不思議と「絶対我が家に来てくれる」という謎の自信?があったので、開いて○を見た瞬間は「そうだよね…!」という気持ちでした。
――X(旧Twitter)の投稿には、しらすちゃんの幸せを願う読者からのコメントで溢れていました。現在のしらすちゃんの様子をお伺いしてもよろしいでしょうか。
当時はおどおどしてお嬢様のような弱々しさがありましたが、後に1匹の猫(おこめ)と、下に(人間の)双子がやってきて、今では我が家の重鎮のような貫禄があります。笑
ガリガリ気味だったしらすですが、ふくふくと育ってくれています。幸せを感じてくれているなら嬉しいです。
――本作を読んだ人の中には、これから保護猫を迎えようと思っている人もいると思います。これまでのご経験から、保護猫を迎える人へアドバイスや知っておいた方がよい知識などがありましたらお教えください。
保護猫の中には辛い経験をした猫も多く、打ち解けるのに時間がかかる猫もいます。年単位の長い目で見て、その子がくつろげる空間を作ってあげ流必要があると思います。
いつまた見放されるかわからない、という不安を抱いている猫も少なくありません。ご自身を「その猫にとって最後の家族」にしてあげてください。
――オキエイコさんは他にも猫に関する漫画を創作されていて、『もしもなんて来ないと思ってた猫』の書籍が出版されています。その中に登場する猫(マメ)は、しらすちゃんと同じ三毛猫です。マメはしらすちゃんをモデルにしたのでしょうか?
はい、しらすがモデルです。
ちょうどカラーも同じような配列になっています。
この漫画は飼い主目線と猫目線、双方向から信頼しあう仲を描いたストーリーです。
ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
――最後に、本作を読んだ方やこれから読もうと思っている方へメッセージをお願いします。
野良猫への苦情、多頭飼育崩壊、殺処分…保護猫の問題は根深く、その対処には飼い主だけの力では限界があります。
だからこそ多くの方に保護猫という選択肢を知っていただくきっかけになれば、と思い書きました。
数年後に「こんな時代もあった」と思えるくらい、人間にとっても猫にとっても生きやすい世の中になれる日を願っています。